B-8 お薦めの建築とトップランナー・巨匠達の建築【建築の楽しみ方】

B 建築の仕事やその周辺

タイトルの通り、お薦めの建築が今回のテーマ。
とは言っても、建築の良し悪しは人それぞれ。
私の体験の中から、ほんの一部を紹介してます。

建築の見方ってあるの?
そう考える読者さんも中にはいることでしょう。
特に建築を仕事にしていないけれど建築好きな人は、建築家は建築をどう見て分析しているのか?
そんなことを知りたがっているかもしれません。
設計の実務をしていると、確かにその建築家が表現したかった部分が使われている空間操作やテクニックから分かることもあります。
しかし、そこまで理解しなくても建築はもっと楽しめるだろうというのが私の思いです。
それは私自身の実感でもあり、別の記事で建築を学んでない時期に感動した建築のことも紹介してます。

ですから、そんな見方もあるのか程度の参考で記事を目にして下さい。

私は上海にあるアトリエ系と称される建築設計事務所で建築のキャリアをスタートしました。
それ以前には建築を学んだことは無く、仕事で建築を覚えた独学系です。
帰国後にライセンスを得て、現在は設計事務所を主宰しています。
東京と長野県で活動しており、塩尻市と松本市で”誰でもできる建築教室”も主宰。
それら建築などに関係する情報を、ブログで記事にしています。

四名の建築家とその作品を紹介しています。

・建築を始める前にみた建築
・建築を始めてからみた建築
・旅先で意識した世界の建築家
・比較的最近の建築

どれも私の主観ですが、全て経験や体験から紹介しています。
建築自体が主役ではなくて、そこでの体験に建築もあって記憶に残ることもあるからです。
そうした体験を含めて、建築を気軽に楽しんでもらえれば。

直島 地中美術館

まだ学生の頃で建築と知り合う前、建築家になろうなど全く想像もしていなかった頃の経験です。
いまでは随分有名なスポットになりましたが、直島にいったことがあります。
当時通っていた服飾学校の友人が瀬戸内海の美しさと、美術を楽しめる場所として教えてくれたのです。
現在は直島含めて瀬戸内海の島々でアートや建築を堪能できるスポットになっています。
私が行った当時は直島のみに草間彌生さんジェームズ・タレルの作品、安藤忠雄さん(1941~)の地中美術館があるぐらいでした。
瀬戸内海やその島々がとても美しく、今でも記憶に残っています。
その記憶の中で、地中美術館の静謐さもよく覚えています。
今はどうか分かりません。
私が行った当時は本当に人がいなくて、半分地中に埋もれた美術館を一人で独占しているような状況でした。

静かな美術館内と安藤さんのモノクロームなピリッとした空間がよくマッチしていたな、と今なら思えそうです。
そんな分析は当時しませんでしたが、純粋に静かで綺麗な美術館だなぁ、と感激していました。
余談ですが、当時は近くの浜辺で勝手にテント泊していても注意もされませんでした。
今のような観光スポットになると無理ですかね。
記憶の中と現状が異なるのを理解していますが、今でも直島や地中美術館はこんな体験談と共にお薦めしています。

その後、豊島美術館 

仕事で建築を始めてから、瀬戸内海島嶼で行われいる瀬戸内国際芸術祭にいきました。
あんな小さな島々に、国外の人を含めて大勢集っていました。
誰があの島々があそこまで人の集る場所にできることを想像できたのでしょうか。
学生時代の私など、まったく思いもよらない未来です。
私は豊島にある、西沢立衛さん(1966~)設計の豊島美術館を目当てに向かいました。
ここもお薦めする建築です。
行ってほしいと思える建築物だったからです。
つまり写真でみてもよく分からないな、という建築。

是非あの場所にいって、目をとじながら寝そべってゆっくりしてください。
内部にそれなりの人がいるのですが、中の静けさ、声の響き、鳥や木々の音など、私は自分がどこにいるのか分からなくなりました。
同時に、学生当時に訪れた瀬戸内海の景色が浮かんできました。
直島含めて瀬戸内海の島々とその建築は、青春時代の記憶もあって私はお薦めします。
できれば読者の皆さんにも自分なりのお薦め建築を得てもらいたいと思います。
そこでの経験や体験とからめて建築を楽しんでみて。
読者さんなりのお薦め建築ができると思います。

Kenzo Tange

2021年の東京オリンピックはなかなか熱気を感じにくい状況ですが、建築界では1964年の東京オリンピック丹下健三さん(1913~2005)の、国立代々木競技場を通してその熱量が多くの建築家と書物で語られています。
建築をしていない読者さんは知らない人も多いかもしれませんが、日本人建築家を世界に認識させた先駆者の方です。

海外では大変広く知られている建築家です、という私のエピソードを一つ。
まだ建築を始めていない学生時代、学校の休み期間中に東南アジアをぶらぶらとしていました。
私は丹下健三さんと幾つかの建築物は見て知っていました。
その後建築家を志すとは思ってもいませんでしたが。
そのとき何処かの安宿で国は忘れましたが欧州の若者と話してると、さっきネットニュースをみていたらKenzo Tange が亡くなったみたいねと教えくれました。
旅行中に出会う海外の人と話していても日本人の名前がでてくることはほとんどなかったので、世界のTange なんだなぁと実感した記憶があります。

私などがとても多くを語れる建築家はでないので、いくつかの書籍を紹介しておきます。
読んだことのある丹下健三さんに関する書物で下記参考になれば、ご一読を。

丹下健三 
(著)丹下健三 藤森照信
丹下健三を語る 
(著)槙文彦
群像としての丹下研究室 
(著)豊川斎赫
プロジェクト・ジャパン 
(著)レム・コールハース

磯崎新さん(1931~)も丹下健三さんや代々木競技場に関して多くを語っています。
磯崎さんは書籍が多すぎて、どの本だったか定かではなく、、すみません。
磯崎新さん、槙文彦さんは丹下健三さんのもとで建築をされていた方々です。
さすがに今回は読みやすい書籍や語りばかりではありませんが。
1964年のオリンピックと丹下健三さん、代々木競技場にまつわる熱を、要所要所で知ることができます。

木陰雲

2021年開催、パビリオン・トウキョウ
建築界隈の方以外は恐らく知らないと思いますので、下記にリンクをはっておきます。
パビリオン・トウキョウ
東京の街中に、9名の実力ある建築家がパビリオンを展開しています。
九段下にあるKudan houseの庭園で展開している、石上純也さん(1974~)の木陰雲に関して。

建築の見方に正解はありません。
私も建築設計を始めてないときにみた建築物で、今でも記憶と心に残っているものがあります。
何かそれを見て残ることがあれば、建築の楽しみ方としてそれでも十分です。
感じたことを記事にしていますが、建築を楽しむためにそれを分析する必要は絶対ではありません。
ここで書いている内容を見ても、建築ってそんな見方をするときもあるのね位で構わないと思います。

木陰雲は一言でいうと、不思議な空間でした。
対比のみえない建築と言いましょうか。
人為的に構築した雰囲気をほとんど感じないのです。
先ほどのリンクにスケッチもありますが、柱も屋根もスケッチのような強い存在感を示しません。
樹木や木漏日とよくなじんでいます。

で、ちょっと視点を変えて、出来るだけ樹木の少ない角度でみてみました。
すると、少しなじみの度合いが減少しました。
柱や屋根がさきほどより強く感じられます。

それが何?と思われる読者さんもいるかも知れません。
ただ建築をしている人からすると、面白い現象です。

建築物は当然ですが人工物です。
しかもそれなりの規模感もあります。
なので周囲に自然が多いほど対比として浮き上がって(主張して)きます。
普段街中のビル一つ一つを気にしないと思います。
ジャングルのど真ん中に、平屋の小さな建物がぽつんとあるのを想像してください。
街中のビル一つ一つよりもよほど存在感が強くないですか。
人工物と自然の対比を無くすことはそう簡単に操作できません。
なので、自然物の要素が多いほど目立たない気持ちにさせる建築は珍しいです。

視点を小物にむけてみます。
会場に設置してある椅子です。
以前からあんなスチールのペラペラな椅子、どうやって成立しているのか気になっていました。
なるほどですね。
死角になる目立たないところでリブをつくり補強してました。
さすがに着座すると、ちょっとゆれましたが。
小物であっても表現を徹底する態度は大切ですね。
神奈川工科大学KAIT工房にいくと、確かこの椅子が置いてあります。

体験して楽しむ

建築や建築家への感じ方は、人それぞれの体験や経験から様々。
だから、自分なりの見方で十分に建築を楽しめる
そんなことを知ってもらいたくて、建築を知る前の私の経験と共に紹介しました。

書物からでも建築は十分に楽しめます
しかし、余裕があれば是非とも建築を体験して楽しんで下さい。
色々な地域の建築MAPなるものもありますので、本を片手に散歩してみるのもよいと思いますよ。

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