F 職人や手仕事【ものづくり事情を知る】

F 職人・手仕事

職業柄、職人と日々接します。
職人事情やものづくり業界について知りたい読者さんもいるかもしれない、と考えいくつか記事で紹介。

職人仕事やものづくり業界に関心はあっても、情報が少ないと考えている読者さんも多いでしょう。
企業に所属する職人さんや著名な作家さんは情報を拾うことができますが、個人単位で活動している職人さんの情報は多くありません。
職人さんはそうした発信が苦手なのです。

私は東京と長野県で活動しており、建築設計事務所を運営しています。
学校ではなく仕事で建築を学んだ独学の建築家。
長野県で建築教室の主宰や空き家再生や地域デザインのこともしています。
奈良井という宿場町で、土-とおいち- という職人や作家さんの作品を扱うお店の運営もしています。
それら建築などに関係する情報を、ブログで記事にしています。

細かい内容は個別の記事に譲るとして、ここではまず網羅的に職人世界の紹介をしています。
また職人の置かれている状況に関して少し記事にしてます。

職人を目指してる人や製作をお願いしたい人などは是非参考に。
また趣味でクラフトや工芸を楽しんでいる人にも楽しめる内容になっています。

私は東京造形大学という美大出身なので、ものづくりは身近な環境でした。
長野県の木曽平沢に出入りしており、漆職人や木地職人と身近に接しています。
平沢のお隣、奈良井宿で職人さんや作家さんの作品も取扱い、私自身も幾つかの品を製作。
それらの活動をもとに記事をおこしています。
建築に特化したような内容は、C群 誰でもできる建築教室とDIY で紹介しています。

あらゆる分野に職人はいる

職人ときいて、どんな職業を読者の皆さんは想像しますか。
私の属する建築世界は、ほぼ全ての職人技を入れるだけの規模があり、職人との関係は密接。
簡単に列挙するだけでも、下記のようにたくさんの職人仕事があります。

・木材加工や組み立てのできる木工
木工といっても、大工棟梁家具・指物(金物を使わない家具)や小物など様々。
ろくろ、といって回転体の造形を専門とする職人さんもいます。
建材や木造工法の多くが工業化されて腕のみせどころも少ない状況ですが、家具や小物を中心にまだまだ手を動かせる余地の多い世界。

・金属の加工や溶接などを扱う金工・鉄工
家具ベースで製作する職人さんから、建築・造船のような大物まで扱う職人さんまで様々。
鋳造・鍛金といった技法で小物を製作する作家さんもいます。
板金工と呼ばれる職人もいて、板物だけを扱います。

・土や漆喰やモルタルなど、こて塗りを主とする左官工
あらゆる素材を扱える職人から、ある素材だけを専門とした職人さんまで様々。
左官工は、新建材の外装や壁クロスの普及で急速にその数を減らしていきました。
いま腕のよい左官工を探すのは本当に大変です。

・陶工
器などの焼き物が読者の皆さんには馴染みがあるでしょう。
窯や土、焼き方の種類で無数の表現があります。
多くが量産の工業生産となりましたが、内外装のタイル衛生陶器も陶工仕事の一種。

・ガラス工
これは想像しやすいでしょう。
ガラス製のもの全般、さまざまなアイテムを作る職人さんがいます。
窓ガラスなどいまの建材に使用される板ガラスは、フロート(技法)ガラスと呼ばれ工場でのライン生産になります。
手を動かしてのものづくり、とは遠い世界。

・塗装工
これも想像がしやすいと思いますが、塗装を専門とする職人さん。
主役として表現活動もできます。
例えば私が携わっている木曽平沢の漆なども技術としては塗装。

・ファブリック・皮革工
製品や造形物をつくる以外にも、織り・編み・染め・なめし、、、と全ての工程に職人はいます。
奈良井で扱っている革製品は、作家さんが猟の活動をするなかでとれる獣の皮を使用しています。

それ自体が製品や作品になるわけではありませんが、建築業界にはさらに色々な職人がいます。
・配管工
配管といっても電気衛生空調など様々な種類があります。
設備の寿命は建築単体に比べてずっと短いものです。
修繕や修理の関係上、仕事の機会は沢山。

・鉄筋コンクリートの鉄筋を組み立てる配筋工
建築好きな人だけの価値観かもしれませんが、配筋にも美しさがありますので腕は重要。

・鉄筋コンクリートの型枠を組み立てる型枠工
型枠も上手に計画して作らなければ脱型できず、コンクリート表面の美しさにも影響するのでとても技術を要求される職人仕事です。

・目地やジョイント部などを保護するシール工
シーリングにもそれを専門とした職人さんがいます。
腕によって、美しいシーリングと汚いシーリングが顕著にでます。
分かりやすい例をあげるなら、設備屋のシールとシール工のそれを比べてみましょう。

特定素材に対しての職人もいます。
竹・糸・紙・石、、、という素材自体を対象に腕を発揮する方々です。

きりがないので、ここまでにします。
身の回りのカタチあるものほとんどに、職人世界があります。
しかし先ほど記事中で紹介したフロートガラスのように、工業生産化が主流で腕をいれる余地のないものも無数にあります。

職人と作家

それぞれの技術を単体で修めている職人さんばかりではありません。
もしフレスコ画を建築内に描こうとしたら、左官と塗装(画工)の両方の知識と技術のある職人が必要になります。
怒る方がもいるかもしれませんが、それらいくつくかの技法をほどほど学んで自身の作品性をうちだしているのが作家だと思います。
腕や技術の職人世界とは異なるアプローチで自身を確立しています。

そう結論した私なりの理由。
例えば携わっている木曽平沢の漆でもそうなのですが、美術作家さん自体に高い漆の技術はありません。
なかには長い職人の時代を経てから作家に転向される方もいますが、ごくごく僅かです。
木曽平沢地域にも年配の女性作家さんがいます。
若い頃から夫と職人仕事をずっと続けてから作家活動をはじめた方ですが、そうした人は稀。
作家さんの多くは学業やせいぜい一・二年程度職人世界に在籍するだけです。

作家さんは作家活動だけで食べられる人は少なく、修理や小物の製作などもおこなっています。
そのなかで、技術的に難しいところは地元の職人さんに丸投げしたり、職人さん達の安い賃金を上手く利用してハネている状況をよくみてきました。(それでも名前がでるのは作家さんのみです)
なので腕や技術という部分に焦点をあてると、職人と作家で大きな違いがあるというのが私の経験から思うところです。

そして、その腕と技術の部分がどんどん消えてます。
作家さんはビジネスマンとなって残り続けていますが、職人さんは消えていってます。
少なくとも私が関っている木曽平沢の職人事情はそうです。
逆に考えると、これから腕と技術をみがいた職人さんは貴重種としてよい単価を主張できるでしょう。
そして腕のない作家に利用されないためにも、できれば自らが作家となれる職人さんを目指しましょう。

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