住むため、事業を起こすため、様々な理由で地方の空き家物件は利用されています。
大抵が改修を必要としますので、そうした時に知っておくと役立つことを少し記事にします。
そもそも地方の小さな町で空き家の改修工事をするときは、何か事情が異なるの?
そう思った読者さんもいることでしょう。
小さな町と空き家には、独特な事情がいくつかあります。
私は東京と長野県で活動しており、建築設計事務所を運営しています。
学校ではなく仕事で建築を学んだ独学の建築家。
長野県で空き家再生や地域デザインのこともしています。
オフィス機能は両方に用意していますが、住いは東京から長野県に移しました。
世間からみれば、移住者となるでしょう。
長野県塩尻市と松本市で”誰でもできる建築教室”という一般者向けの教室も主宰。
それら建築などに関係する情報を、ブログで記事にしています。
この記事では以下の内容を紹介。
・町並みの規制
・助成金や補助金
・移住者の改修工事
上記内容の単語で検索すれば、色々な情報が得られるかと思います。
この記事では実体験を通しての内容になってます。
地方に応じて事情は異なるのですが、読者の皆さんが応用できる原則的な部分にもふれていきます。
地方の小さな町で活動している私自身や周囲の友人を通して、やはり事前に知っておくことの重要性を感じています。
改修前や改修中に計画がとまることもあります。
余計な費用を払ってしまうこともあります。
事前に知っておけば、この地域でもこうしたことを確認しないとマズいのでは、と感が働きます。
私が長年関っている長野県塩尻市、木曽平沢や奈良井と周辺の小さな町々での事例です。
重要伝統的建造物群保存地区
略してジュウデンケン(重伝建)とも呼ばれます。
私の活動拠点にしている、木曽平沢と奈良井という町がそれに指定されてます。
補助金がでる制度もあり、利用される機会があるかも知れません。
重伝建は文科省が選定しており、その地区の町並みや景観を保全するような事業に対して市町村から(国から市町村へ)補助金がでます。
事業というと大げさですが、例えば皆さんが改修工事などした時に条件を満たせば工事費用を補助金で負担してくれる制度です。
条件は各地域で様々ですが、その町並みや景観を保存することが基本的な概念。
例えば格子窓が並ぶ町並みであれば、それを残すことなどが条件として付いてきます。
木曽平沢と奈良井は、ひろくない道の両側に住戸が隣棟間隔なく並んでいます。
特に木曽平沢の敷地は細長く、一つの敷地に数棟分散して建っていたりもします。
町並みの特徴としては、落ち着いた茶色の格子窓が並んでいます。
これらの格子やカラーコードに従う必要があり、計画段階で承認を取らなければなりません。
こうした地域で空き家を探すときの注意点をお伝えします。
先ほどの制度は、つまり道から歩いたときの間口の見え方を保存してほしいわけです。
もちろん住戸と住戸の間に小道があれば、その側面も対象になります。
すると面白い現象がおきて、道から見える部分は綺麗に改修されているのに奥は手付かずとなっている家が沢山。
少し高所から町を見下ろしてみると、表通りの美しさと異なった風景がみられます。
高齢者が多い町だと、その後長く使用する予定のない場合が多数。
全体を改修する選択肢を取らずに、補助金を利用し見えてるところだけ綺麗にするケースが多いのです。
なので重伝建で空き家を探したり事業を計画するときは、必ず内部の確認もしてください。
通りを歩いて、綺麗なお化粧と雰囲気だけに惑わされないように(笑)。
補助金・助成金
重伝建の補助金は、新築にも適応されます。
道から見える部分に関して景観コードに沿うようにすれば、工事費用の一部が補助金から賄うことができます。
塩尻市の例ですが、空き家に関する補助金もあります。
空き家バンクに登録してある物件は、改修費用の1/2(上限50万)が補助金からでます。
また残置物の処分に別途10万の助成もあります。
空き家物件を見つけた後に、それを空き家バンク登録してもらう方法も取れます。
見つけた物件が空き家バンクに登録されていないから、とあきらめる必要はありません。
こうした助成制度はあえて分かりにくく条文化されています。
できるならツテを探して、実際にその制度を使った人を紹介してもらいましょう。
説明文を読むだけでは理解できないことも分かってきます。
余談。
建築物自体をいたわる補助金の使われ方をしていない事例も多いですが、こうした制度は先日友人と話していて必要だなとも思いました。
友人の住んでいた瀬戸のある町は、開発を境に風情のあった町並みが急激になくなってしまったそう。
重伝建に指定された地区ではなかったのです。
私の生まれた小さな町も、ある日駅が新設されると景色がすごい速さで激変しました。
開発のスピードと強さを考えると、こうした制度も無ければなと思えます。
改修と小さな町の人間関係
移住者の空き家改修に関ることも多いのですが、計画がストップするケースもあります。
特に店舗、宿、ギャラリー、作業場、など住い以外として改修をする場合。
よそ者が円滑に計画を進めるためのコツを少し。
結論を言えば、前もって地域民や団体との人間関係構築と挨拶まわりをしておきましょう。
これさえ押えておけば問題ないのですが、もう少し詳しく説明します。
移住してきた人が数年で地域民と認識されることはなく、相当に長い年月を要します。
当然のような気もするのですが、そう思わない人も多い様子。
移住者で目立つから色々言われると思い込み(真実の側面もあります)、自分にとって都合のよい人だけコミュニケーションをとる人もいます。
移住者同士や都合よく扱える住民とだけ付き合って、なおさら地域の人間として認識されません。
色々な住人と仲良くなる必要は全くありません。
地域民として認識されはじめることが重要。
普段は移住組みの中ばかりで、必要なときだけ地域民と交流する。
こうした打算をもって地域にいると、色々と上手くいきません。
小さな町の人は人間関係が密でそうしたことに敏感。
すぐに気付かれます。
移住者は気まずくなり、どんどん都合の悪い地域民とは関らなくなります。
自分に言いたいことがあるように、当然相手も言いたいことがあります。
そこをシャットダウンするので、関係が進みません。
関係がないまま少し目立ったことをすると(例えば個人活動や事業のための改修計画)、何か横槍があったときの味方は移住組だけ。
もしくは利害関係でのみつながった住民。
このあたりの問題は別の記事にまとめました。
そんな状態で改修や計画を進めようとすると何が面倒なのか。
それは挨拶まわり。
小さな町だと色々な小組織や組合などがあります。
それぞれの長に計画のご挨拶をしたほうが、一度計画が進みはじめた時にスムーズ。
挨拶回りをして賛成反対様々な意見が出たとします。
そうした賛成反対を長や組織間のなかで話し合ってもらいます。
移住者の新参者が何かをするときは、町の事と認識してもらったほうが上手くいきます。
自分にとって都合のよい人だけと付き合う人に、こうした挨拶まわりは不可能。
地域の人、地域のこと、と認識してもらえないからです。
何か勝手なことしてると思われ、横槍もはいります。
味方は移住組みと利害関係のなかで利用できる住民だけ。
町の中で建設的な話し合いは持たれず、何度も何度も横槍が入り最悪中止となります。
田舎くさい話で、とおそらく都市圏住いの人は思うでしょう。
しかし小さな町で計画を進めていくときには、やはり認識しておきましょう。
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