D-3 耐力壁【誰でもできる構造計算

D 住いと知識

建築には耐力壁と呼ばれる構造上重要な部位があります。
皆さんと馴染みが深い木造住宅にも当然あります。
この体力壁が計算上安全かどうかの確認を、設計時にもする必要があります。
この体力壁の計算ですが、木造であれば+、-、×、÷だけを用いて簡単にできます。

この記事では、そもそも体力壁とはを説明。
具体的な計算方法はすでに多くのサイトやブログで解説があったので、そちらにゆずります。
図解つきで比較的分かりやすいかなと感じた、外部サイトのリンクを参考に。
リンク先で、
壁量計算
4分割法
をご確認下さい。

中古の木造住宅購入を検討しているとき、地震などに影響のない構造なのか気になったことはありませんか。
住いやもと空き家をDIYしようとして、構造的に問題ないのか迷った経験はないでしょうか。
構造のことなんて専門家ではないと分からないよ、とよく建築教室の生徒さんにも言われます。

しかし木造住宅規模であれば、専門家ではなくても理解できることが沢山あります。

私は仕事で建築を覚えた、独学系の建築家です。
修行先の上海から帰国後にライセンスを得て、現在は設計事務所を主宰しています。
東京と長野県で活動しており、空き家再生や地域デザインのこともしています。
長野県塩尻市と松本市で”誰でもできる建築教室”という一般者向けの教室も主宰。
それら建築などに関係する情報を、ブログで記事にしています。

この記事で、そもそも木造の体力壁とは、を説明。
体力壁計算の壁量計算4分割法についても簡単にふれておきます。
繰り返しになりますが計算方法はすでに多く紹介されているので、そうしたサイトにゆずりました。
記事を読む前にリンクをはったページで計算方法を簡単にみておくと、より楽しめると思います。

一般の人が建築を難しいと考えるのは、その専門性でしょう。
特に法律と構造はその最たる分野だと思います。
そうしたアレルギーを少しでも取り除ければと考え、今回の記事を書いています。

実際に計算方法をリンクページで確認してもらうと分かりますが、簡易計算であれば誰でもできるのが木造住宅のよいところ。
建築構造も、生活のなかで活かせる機会がいっぱいあります。

耐力壁とは

地震や風に対して抵抗する部材が配置されている壁を耐力壁と言います。
それらの部材が無い壁は耐力壁ではなく、ただの壁。
雑壁と言います。

木造住宅なら柱と柱の間に筋交いと呼ばれる斜めの材があり、それが抵抗する部材。
木材ではなくスチールの線材で筋交いを構成するときもあります。
柱と柱の間に、構造用合板という板材を貼り付けても耐力壁。
この耐力壁が無いと、外部からの力で建物が崩れやすくなります
簡単な計算式で出来る壁量計算と4分割法は、この耐力壁の量が建物全体で問題なく配置されてるかを確認する方法。

抵抗の強さは、以下の条件で変わってきます。

筋交いであれば、部材断面の大きさと本数(片掛け1本orたすき掛け2本)。
構造合板であれば、合板の種類と厚み、釘・ビスの種類とピッチ、枚数(片面or両面)。

リンク先にでてくる壁倍率というのは、これら強さの係数

筋交い、構造合板以外でも耐力壁はあります。
土壁にも係数は高くありませんが、壁倍率が設定されてます。
柱と柱の間に貫と呼ばれる、柱と直交する方向に部材をいれて抵抗させることも可能。

DIY等で勘違いしている工事をしている人を見かけるので、念のため説明します。
耐力壁は構造で囲われた部分に配置しないと意味をなしません。
柱と柱の間にあっても、それが土台や梁など上下の構造材にも接続される必要があります。
たまに天井の下までしか構造合板や筋交いや土壁を設置していないDIYをみますが、耐力壁になってません。

耐力壁の確認

図面が無いときは、壁の仕上げや下地をはがしたりする以外に方法がありません。
設計の観点から隅部分には耐力壁を入れる場合が多いので、その部分はむやみに解体しないほうがベター。
筋交いは斜めの線材なのでみれば分かると思います。
合板系はマークが印字してあるので、それで確認できます。
構造用合板、マーク、とでも検索すればすぐ分かります。

古い木造住宅だと、耐力壁の量が足りていないケースがほとんど。
今回紹介している壁量計算や4分割法で、ざっくり確認してみるとよいですよ。

図面が用意されている、比較的新しい物件はすぐに確認できます。
平面図若しくは構造図で、耐力壁と記載されてます。
図面上に凡例という記載があれば、そこも見て下さい。
図面上のマークが耐力壁として表現されることもあるからです。
例えば、
凡例▲:耐力壁 構造用合板12厚 両面
とあったとします。
平面図に▲マークがある個所の壁が耐力壁。

EWと表記もされます。
Earth quake Wall、の略です。

DIYや改修をするときは、むやみに耐力壁を撤去しないように。
構造上不安定になったり、確認申請が必要な時があったり、工事が複雑になります。
素人工事の際は、そこには触れず雑壁のみを対象にしましょう。
耐力壁の仕様は、国によって異なります。
修行時代に過ごした上海の設計事務所で、一度だけ痛い目をみました。

壁量計算

ざっくり計算したい人向けの計算方法です。
外部のページですが、計算方法はリンク先で学んで下さい。
図解もあって分かりやすいと思います。
地震と風の2種類の力に対して、それぞれ耐力壁の量を計算します。

用語の説明を補足。

必要壁量
その建物に必要な量の耐力壁。
面積や階数によって、必要な量は変わります。
地震に対しては、各階の床面積から求める。
に対しては、各階の立面(垂直方向)の投影面積から求める。

床面からの高さ
図面ではFL(Floor Line)と表記されるケースが多いです。
床仕上げ面の位置。
階高、という言葉や寸法を探して確認もできます。
階高はFLからFLまでの寸法を拾っているので、FLがどこの位置か分かります。

存在耐力壁
その建物が有している耐力壁の量。
設計段階では、配置する予定の量。
X方向とY方向それぞれに計算。
耐力壁の量に壁倍率をかけて求めます。
壁倍率は前述しました。

存在耐力壁が必要壁量より多ければOKという、簡単な計算方法。
バルコニーはとか屋根裏部屋など細かい諸条件は色々ありますが、ざっくりでよければこれで確認ができます。

4分割法

もう少し詳しく計算したい読者さんは、4分割法を。
壁量計算と基本的に考え方や計算方法は同じです。
違いは、耐力壁がバランスよく配置されているか。
これも併せて確認する計算方法。

4分割法は建物の偏心率が所定の数値以下であれば確認しなくてもよい計算。
ただし偏心率の計算は、数式アレルギーの人には少しとっつきにくい。
壁量計算同様に、4分割法も+、-、×、÷でOK。
この計算方法は、建築物端部の1/4の耐力壁を対象に計算します。

壁量計算で出てこない計算項目は、壁充足率壁比率
もしも壁充足率を満たさない時は、壁比率を満たしているか確認して下さいという二段構えの方法。
壁比率も満たさない時はOut。
耐力壁がバランスよく配置されてません。

何故こんな計算もしてバランスを確認するのか、少し説明。
四角い建物を想像して下さい。
四周の壁のうち、その上辺だけに耐力壁があったとします。
壁量計算では存在耐力壁が必要壁量より多く、壁の量は満たしていると仮定します。
その建物に地震が発生
上辺は地震に抵抗して動きませんが、その他の辺はグニャグニャに動きます。
一辺を支点として大きく揺れ、その他の部分が崩壊。
まずいですよね。

建物は全体を通して同じような硬さあるいは柔らかさであったほうが、構造的に安定するのです。
その違いが大きすぎると、建物の要所で揺れ方も大きく異なり、破壊エネルギーを増大させます。
それを防ぐため、耐力壁をバランスよく配置します。

誰でもできる構造計算

今回紹介したものは、私が主宰している”誰でもできる建築教室”の生徒さんにも計算してもらってます。
建築、設計、工事の素人を対象にした教室ですが、皆さんきちんと耐力壁を計算できています。
+、-、×、÷以外の数式を一切使いませんので、是非お試しを。

新築を設計する立場の方はこの記事を読まないと思います。
ですが、DIYをしたい人古い住宅を購入したい・する予定の人、などはざっくりと計算してみましょう。
構造的に安定しているのか不安定なのかの確認ぐらいは、木造住宅程度なら誰でもできます。

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