この記事は私が運営している、”誰でもできる建築教室”の生徒さんのDIY内容を紹介。
また建築家・指導する立場から、DIYの注意点や心構えも説明。
DIYする人、多くなりましたね。
私はセルフビルドって言葉のほうがなじみがあります。
今は本当に情報の集めやすい時代。
私の生徒さんもYouTubeをよく参考にしています。
情報は確かに沢山ありますが、実際にやってみることに躊躇する人もいるでしょう。
・どんなことから始めるべき?
・道具類ってどうすればよいの?
・なにかトラブルは起きないの?
実際にはじめようにも、知らないことへの不安が第一歩を阻んでいませんか。
私は東京と長野県で活動しており、建築設計事務所を運営しています。
学校ではなく仕事で建築を学んだ独学の建築家。
長野県で空き家再生や地域デザインのこともしています。
オフィス機能は両方に用意していますが、住いは長野県。
活動圏内である、塩尻市と松本市で”誰でもできる建築教室”を月2回定期開催しています。
それら建築などに関係する情報を、ブログで記事にしています。
この記事では生徒さんが取り組んだDIYの内容をもとに、DIYをはじめる前に知っておいてほしい項目をいくつか取り上げました。
・道具や工具について
・大切なかくれた工程
・一歩すすんだ材料の入手方法
・予想外の苦労
DIYをしている人の情報はブログやSNSでいくらでもあります。
実際の方法は、それらから学べます。
この記事ではプロの建築家が素人のDIYを指導している視点が、ほかの情報と違うところ。
方法だけを知っても、実際の行動に移すのは不安なもの。
実際のDIYの方法ではなく、DIYをはじめる前に知っておきたい情報や心構えにふれてみましょう。
建築教室の生徒さんも同様で、設計やデザインの段階で予備知識をもつと行動に移せるようになりました。
ここで紹介する例は、それまで全くDIYをしたことがなかった生徒さん達のお話です。
子供部屋と道具・工具
こども部屋をお子さんと一緒につくりあげた生徒さんの実例。
DIYと道具の関係を説明します。
DIY初心者の陥りがちなミスと対処法をご紹介。
DIY、セルフビルド初心者に対して毎回思うことは道具と工具を持ってないな、です。
自分でDIYしようとすると、いろいろな道具が必要になります。
切る、削る、穿孔する、混ぜる、打ち込む、塗りこむ、接続する、溶接する、水平を出す、仮止めする、、、。
建築って殆ど全ての加工(準備)工程があります。
それに対して、手持ちの道具がないんですね。
子供部屋を造った生徒さんは、インパクトドライバーを持っていました。
猫のためのキャットウォークを設計して、インパクトドライバーでつくった経験があったからです。
余談。
生徒さんからキャットウォークをつくりたいと希望を伝えられました。
一般住宅に何でキャットウォークが必要なんだと驚きました。
建築業界でキャットウォークというのは、高所上部に架かるメンテナンスなどに利用する仮設・簡易通路のこと。
そのあとキャットは猫ちゃんのことだと説明を受けて恥ずかしくなりました。
子供部屋を検討しているときには手持ちの道具がインパクトドライバーのみ。
そこで金物とビスだけで接続する方法で設計してもらいました。
金物も見えないようにデザインすれば、突合せ接続でもそれなりに見栄えも担保できます。
但し壁下地の骨組み木材をカットするのに時間かかりそうでした。
そこで生徒さんはスライド丸のこを一つ購入。
棒材などを安定した設置状態で、垂直含めてある角度で切断できる工具。
その二つの道具で見事に壁の設置と建具(扉や窓のこと)の取り付けをやり遂げました。
のり付きの既製品で、壁紙も自分ではってました。
DIYで大切なのは、加工の内容を調べて必要な道具を買うか、手持ちでできる道具で設計とデザインをするかを決めること。
壁下地の板材は切り欠く部分がたくさんあります。
素人工事で寸法の精度を出すのは大変。
例えば木質下地板だと5mmだけ幅を短くしないと板が入らないとき、電動工具を用いても素人では時間がかかります。
そこで石膏ボード下地で設計してもらいました。
石膏ボードであれば素早くカッターで加工が可能です。
ただし石膏ボードの廃棄には注意してください。
産業廃棄物扱いなので、近所のゴミの日に出しても回収してもらえません。
その時は少量だったので工事関係者の知人にお願いし、工事現場でまとめて廃棄してもらいました。
材料と廃棄に関しても、ネットで事前に調べる癖をつけましょう。
石膏ボード下地のもう一つ注意点は、ボード部分だけにビスやネジを打ち込んでも利きません。
下地骨組みの位置に利かせるか、ボードアンカーという部品を併用して打ち込みましょう。
道具類も安いものばかりではありません。
やりたいことを膨らませてすぎ、一揃い道具を得ようとすると二の足をふみます。
まずはベンチでも小さな棚でも少ない加工で作れるものから始めて、そのための道具を1つ購入してみましょう。
小さくはじめることが重要。
生徒さんを見ていても、それが長くDIYを続けられるコツなのかなと実感してます。
土間うちと大切な工程
床のDIYをするときに大切な、レベルだしに関してご説明。
家具や簡単なインテリア程度であれば気にすることはありません。
無視してDIYしても構いませんが居住快適性は格段に上がるので、是非知ってもらいたい工程。
教室の生徒さんから、よく土間をうちたいとの相談をうけます。
大変なのであまりセルフビルドではお薦めしていません。
何故あまり薦めないかというと、皆さんコンクリートやモルタルを練って床面に敷くだけだと思っているから。
またセメント、砂利、砂の袋は重いしそれを手練りでやるのは重労働。
コンクリートとモルタルの違いについても質問を受けるので簡単に説明。
コンクリート
セメント、砂、砂利、水を練ったもの。
モルタル
セメント、砂、水を練ったもの。
一般的にはまずコンクリートで土間をうって、モルタルで平滑面をつくります。
土間の厚みが大きいときは鉄筋や金属メッシュを配筋し、強度をあげてひび割れを防ぎます。
モルタルではなく、セルフレベリング材(レベラー)といったものを流し込んで平滑面をつくる方法もあります。
モルタルと混和材を原料にしたシャバシャバな液だと思ってください。
素人DIYでは、レベラーを使用したほうが断然作業はらく。
実際に土間をうつのも大変ですが、その前にする大切なかくれた工程。
それがレベルだしです。
これが難しいので、私は素人工事をあまり薦めません。
土間うちを工事業者に頼むとそれなりに費用がかかります。
本人がDIY感覚でできる程度であればよい、という時は特に止めません。
床面をつくるときは、まず水平面の基準をつくる必要があります。
こうした基準面や基準位置をきめることを、レベルだし・墨だしと呼びます。
土間を敷こうとする場所の一番高いと思われる位置に水平機を置いて下さい。
その位置に墨(印)をつけて、そこを基準面(点)に全ての寸法を決めます。
真平がよければ、その基準面から同一の寸法で下がった(若しくは上がった)位置が全ての土間仕上がり面。
土間面が広ければ、墨糸を適当な間隔で流しましょう。
水勾配をつくりたいときも同様です。
例えば一方は基準面-50mmでもう一方を基準面-70mmとします。
20mmの高低差ができ、それが勾配になります。
水掃除などした時に、真平だと水はけが悪くてなかなか乾きません。
できれば排水できる方向に水勾配をつけましょう。
土間うちなど床をDIYするときは本来基準面を墨だしする必要がある。
このことをよく覚えておいて下さい。
とくに古い家の改修工事のときは、かなり傾きが大きい場合があります。
適当に囲まれた床下材のなかに土間を敷いても傾いた床になってしまいます。
工事前にあらかじめ現調とレベル差の解消を設計しておけば、多少精度よく素人でもDIY可能。
精度を気にしないのであれば、囲まれたところへそのまま土間うちでも構いません。
でも何かがあっちへコロコロしても、可愛いもんだと思えるようにしましょう(笑)
水平機は、レーザー式の機器でも1万円切る製品もあります。
もちろん値段に応じて精度も上下しますが、安いものでも一つあると便利。
※レーザー水平器を使う際の注意点。
精密機器なので、レーザーの電源を入れたまま移動させないこと。
ウッドデッキと材料の入手方法
DIYでは材料購入も自分ですることになります。
一般的には皆さんホームセンターやネットで購入。
別の記事でウッドショックに関することを書きました。
材料が高騰したときや使用する材料がそれなりの量になるときは、知っておいて損のない方法があります。
ウッドショックの最中、外部のデッキテラスを設計した生徒さんがDIYで作り始めようとした時のこと。
生徒さんからヘルプの声が私に掛りました。
「デッキの基礎・束と大引きまで完成しましたが、木材の価格が3割ほど上がり予算内で完成できないです」と。
3割も?と驚きました。
生徒さんが以前ホームセンターで撮っていた価格の写真と現在の価格を見比べると、確かにその通りでした。
生徒さんはウッドショックが騒がれる前に設計は殆ど終了。
必要な木材の断面寸法と数量を拾い上げていました。
それをもとに、ホームセンターで使用材を選別して概算見積もりを作成。
予算的にも納まり、細かいデザインの決定や外構の解体等を進め、数ヶ月経つなかでウッドショックが始まったという状況でした。
想像以上に予算を上回っていたので、一旦ホームセンターでの購入はストップ。
私から近場にあるなじみの製材所に連絡をいれました。
製材所から直接購入。
これがホームセンターやネット以外での方法。
つまり流通の上流で購入するのです。
製材所としては、業者さんのように大量購入してくれるお客さんが喜ばしいのが事実。
しかし個人客を全く相手にしないわけではありません。
一度関係ができれば、その後の購入も比較的スムーズ。
ただし必要な材の断面寸法や数量を、どういった用途の場所に使うか等を相手に相談できなければなりません。
生徒さんはツーバイ材で設計をしており、その断面寸法に近い常材を製材所でピックアップしてもらいました。
結果サワラ材で近しい寸法のものがありました。
その材で再度生徒さんに設計をしてもらい、数量を拾い直すように指導。
製材所から聞いた材料の単価から、大凡の金額を計算するとだいぶ安く納まりました。
製材所に相談するときは必ず単価を聞いてください。
㎥か坪しばりで伝えてくると思います。
㎥ (立米)は計算できますね。
坪はよく分かりにくいと思いますので、下記のように聞きなおして下さい。
幅**×厚**×長さ**の材が何枚・本のセットですかと。
結果どのくらい安くなったか。
ホームセンターのツーバイ材価格の約半額。
デッキの規模は3M×3Mで3周に1.5Mの羽目板壁が立ちます。
その床材と壁材を購入したぐらいの量と考えて下さい。
金額としては税込みで38,000円程度。
材料を流通の川下で探して予算に納まらないときは、川上で。
量が僅かなときは探す労力をペイできるか分からないので、手段の一つとし覚えておきましょう。
外構解体工事と予想外の苦労
外構とは、簡単にいえば建築物周囲の環境や空間のこと。
住宅で言えばお庭やアプローチなどと思って下さい。
生徒さんがご自身で設計したデッキテラス空間を子供たちと作るため、ブロック塀や植え込み境界レンガの解体を計画していました。
生徒さんはご自分で解体を試みたそうなのですが、ハンマーやスコップなどの手持ち道具ではびくともしないと私に相談。
そこで業者に相見積もりをとってもらいました。
想定していた予算よりも少し高かったようなので、友人の一人親方に入ってもらうことに。
そうした経緯で、私も現場へ立ち会いました。
そのお家は中堅ハウスメーカーさんが建てた家。
ブロック塀は周囲を囲んでいるものではなくて、6段×4列の小さな独立塀。
解体に立ち会ってびっくり。
ブロック塀にはブロックとブロックの間に鉄筋が配されています。
崩落防止のためです。
工事の基準もあって、今回の1.2M以下の塀は縦横800mm以下の間隔で配筋しなければなりません。
コンクリートブロックには規格寸法があります。
厚みは数種類あり横390×縦190が基本になります。
半端な寸法なのは、これに目地幅10を見越すと400×200になります。
つまり、縦方向は2列ごとに一本、横方向は4段ごとに1本鉄筋を配さないとなりません。
ブロックを解体してみると、縦は各列ごと、横は2段ごとに配筋。
安全側に設計と工事をすることに問題はありません。
個人的な感想として、こんな小さな塀をずいぶんしっかり計画してるでした。
植え込み周囲にレンガが1本づつ地面に埋めこめれて境界を形成しています。
そのレンガ間と底部をモルタルで接続しただけかと思いきや、地面下でモルタルが深く打ち込まれ下部でがっちり固定。
芝が施されている庭なのですが、雑草が根を張らないようにインターロッキングブロックが地面下に敷き詰められています。
メーカーさんにとって消費者のクレームは死活問題。
最悪を想定して品質を上げるのも、やむをえない状況なのですが、、、。
手持ち道具の少ない素人工事では、解体だけでもこれはたしかに難儀。
メーカーさんの商品住宅をDIYで解体するときの注意点。
かなりしっかりと工事されていますので、予想以上の手間がかかります。
DIYとは無関係ですが、住宅問題の豆知識。
全ての部分に高品質を施すことは、クレームに対処する観点でみれば確かに正解。
しかし、こだわりたい部分に予算を配分するという方法がとれません。
必然的に住宅の販売価格に反映されます。
これは些細なことでもクレームにしてしまう我々消費者がつくりだした一面でもあり、消費者さんメーカーさん双方の苦しい問題。
小さなことから、実際にDIYする
知る前にはじめるのと、知ってからはじめるのでは不安の度合いが異なります。
生徒さんをみていると実感できます。
知る前にはじめてしまった生徒さんも、私が助け舟をだして知って以降は自分から行動してくれます。
日々、生徒さんが設計やデザインを経て、DIY・セルフビルドしている姿をみていると本当に楽しそう。
本日の記事を読んで、ちょっと始めてみようかな、と思ってもらえれば幸いです。
先ずは小さなものをDIYすることから計画しましょう。
そして、そのために必要な道具を一つ購入です。
一つだけで作れる、簡単なものからはじめましょう。
実際につくることで、できるDIYがどんどん増えていきますから。
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