B-7 色々あるさ、建築の仕事02【理由を知ろう】

B 建築の仕事やその周辺

今回は建築家自体の役割業務報酬相談料に関する、仕事をテーマにしています。
役割に関しては、設計施工分離が何故必要なのかという話。
業務報酬や相談料に関しては、なかなか厳しい業界ですという事例を。

設計施工分離って何?という読者さんもいるでしょう。
文字通り、設計と施工(工事)の会社が別という意味。
建築設計と施工業者の役割に関して、少し詳しく別の記事にしています。

基本的に設計と施工は相互監視し、お互い不足しているところを補い建築をつくりあげていきます。

業務報酬はこれから建築家を目指す人、相談料は建築設計を頼みたい人には興味があることでしょう。
製品と違いなかなか体系化された料金表があるわけではないので、少し実情を知ってもらえればと思います。

私は上海にあるアトリエ系と称される建築設計事務所で建築のキャリアをスタートしました。
それ以前には建築を学んだことは無く、仕事で建築を覚えた独学系です。
帰国後にライセンスを得て、現在は設計事務所を主宰しています。
東京と長野県で活動しており、塩尻市と松本市で”誰でもできる建築教室”も主宰。
それら建築などに関係する情報を、ブログで記事にしています。

設計施工分離のトピックは、私(建築設計事務所)が施工側に参加して仕事をする機会があったので、それを例に説明していきます。
つまり施工側で設計やデザインをするケース。
業務報酬や相談料も、日々の実務で体験していることから記事にしてます。

建築設計をする側も頼む側も、何故そうなっているのかを知ることは重要です。

建築の設計や工事に携わっている人であれば知っている話ですが、それ以外の読者さんは何故設計を専門にする会社と工事を専門にする会社があるか知っていますか?
また設計と工事をセットでおこなう会社がありますが、何がメリットになるか分かるでしょうか。

それらの理由のいくつかは、頼む側のデメリットになることもあります。
まずは仕組みを知って、選択を判断できるようになっていきましょう。

施工側で設計とデザインをする

友人から、中央図書館の大規模改修工事プロジェクトに参加してくれないかと相談を受けました。
入札案件でした。
設計は大手組織事務所で、相談してきた依頼者は工事元請の”施工”会社
組織事務所に関しては、別の記事で少し説明。

私の事務所は意匠設計が専門ですよと伝えたのですが、人が足りないのですぐ参加してほしいとのことでした。
知人の施工会社から話を聞いたとき、施工図作成のチームにでも入るのかなと思いました。
意匠設計をしてるから、ちょっとした施工図書の作成もできるだろうと思われたのかと考えていました。

施工会社は工事を遂行するための施工図面などを作成して、設計側の承認を受けます。
設計側はその工事が設計図書の意図を汲んだ建築物になるかを確認する必要があり、施工側が好き勝手に工事ができないような体制になっています。
この設計側の業務を、設計監理業務といいます
その設計監理業務も、先述の大手組織事務所がおこなっていました。
設計と設計監理が別々のケースもあります。

確かに施工会社の図面チームとして参加したのですが、しかし設計とデザインも同時にすることになりました。
理由は色々とあるのですが、設計側があまり現場にコミットしてない現場でした。
改修案件だからなのか、現場で熱量を持って指揮をする設計担当者ではありませんでした。

これは悪意があってのことではなくて、よくある現象。
大手の事務所になると、数多くの様々な案件を限られた人数でこなしていきます。
そうすると、必然的に優先度合いをきめて業務をこなしていくことになります。
プロジェクトの知名度、設計やデザインのチェレンジング度、報酬等、総合してこうした要素が低い案件には強くコミットしません。
もちろん会社の名に恥じない最低限の仕事はしっかりとこなしますので、あまり悪意をもって解釈しないで下さいね。

ずいぶん年季のはいった図書館で、仕上げをはがしてみると設計図の通りになっていない個所が沢山あります。
そして、設計やデザインの変更が設計側からしょちゅう出ます。
このあたりは私も設計事務所の人間なので、いつものことだな(違う建築家さん、すみません)ぐらいに考えていました。
ただ、いつまでたっても設計側から変更の設計図書やデザイン案がきません。
設計からしたら、空間を自分の設計やデザインで実現するのが一番楽しい部分です。
そこを部分的に、施工側へ任せっぱなしにしている様子。
しかも大視聴覚室のような見所ある空間を、です。
竣工(建築物の完成のこと)までの日数に限りもあるので、私のほうで設計図と承認の施工図を仕上げているような状況でした。
施工側で設計変更やデザイン案含めて私がおこない、設計側へ承認をもらいにいくのです。

悪いことはしていませんが、ちょっといいのかな?
建築家として疑問はありました。

何故かというと、この体制だと施工側で都合のよい設計・デザインにできてしまうからです。

例えばですが、この材料や商品なら安く手にはいるからそれを基準に設計・デザインをしよう。
そんなことが可能になります。
施工手間や材料費が安くなれば、施工業者の手元に残る金額も大きくなります。
このプロジェクトは設計施工分離の案件。
施工側はデザイナーとして名前が世にでるわけでは無く、少しデザインがまずくなっても最終的には無責任でいられます。
設計施工分離の案件の施工側は、必然的にデザインよりも施工の無難性や費用を安くするほうに舵をきりやすくなります。

それをコントールするのが、設計監理業務になります。
つまり発注者(お客さん)の代理人となって、当初設計の品質を工事面からも担保します。
ですから設計・施工がおなじ会社の案件は、お客さんからしたら客観的に判断をしてくれる代理人がなく、不利な状況といえます。
そこで設計施工一括工事では、コンストラクションマネージャーといった第三者機関を入れて、そうした不利益を解消する仕組みがあります。

施工側で参加していたので、私も設計者として名前を出すことことは当然出来ません。
丸々こちらで設計やデザインできた室もあって、自己満足はできましたが、、、不思議な経験でした。
現場へのコミットは消極的でしたが、かなりお祭り騒ぎで時間のタイトなプロジェクトを最終的には魅せられる建築にまとめきりました。
大手事務所のその力量は、さすがだなと感服はしました。

業務報酬

建築を仕事にしている人には痛い状況ですが、建築の相談をする側にはお得な真実かもしれません。
皆さんが想像されている建築家の仕事は、設計やデザインを依頼されてその報酬を得ることだと思います。
建築一式を任された時は、総工費の**%、**人工×単価、住宅は***万円から、など対価を請求していきます。
部分的な仕事だと、***図面の単価×枚数など図面種毎で請求することもあります。
独立間もない人や若手のひとは時間単価で仕事を請けざる得ない時も多いですが、おまりお薦めをしたくありません。
専門技術や知識をもった人へ対する単価に、殆どのケースでなってないから。
それ大学生のアルバイトでも稼げるでしょ、といったレベルです。

建築設計業務の報酬は、総じて高いとは言えないのが現状。
理由としては、報酬基準に確かなものが無いから。
国からも建築士の業務報酬基準は提示されているのですが、さほど意味をなしてません。
業務報酬基準で提示しても、その単価を受け付けてくれいない仕事が沢山です。
医療報酬制度のような、しっかりした基準ではないのです。
安い仕事が習慣になると経営上まずいのでこちらから断らざる得ないときもありますが、その後の関係性を含めてかなりの機会損失を出しているのは確かだと思います。

また建築設計事務所の数が多いのも理由でしょう。
仕事の取り合いになってくると、安売り合戦に参加せざるを得ない知名度のない事務所が多数を占め、それが世の中でスタンダードだと認識されます。
自分で仕事を作り出せない設計事務所以外は、これからも厳しい業界です。

建築相談の対価

仕事以外にも、友人知人や集まりで出会った人など建築に関する相談を受けることは非常に多いです。

ちょっと構造に問題ないか見てくれないか。
ここをどんな空間にしたらよいか、アイデアもらえないか。
家を一緒に見て、その運用に関して教えてもらいないか。
などなど。

大概の相談って建築業界では料金をもらっていないと思います。
大手のハウスメーカーさんや工務店さんは基本的に相談料は無料が多いです。
これらの会社は仕事が成約した時の利益が工事から大きく取れるので、もう営業経費ですね。
時間あたりの相談料を設けている個人事務所もありますが、出張以外のケースでは稀です
3,000/h程度ですか(出張の場合はもう少しかかります)。
例えばですが、同じ士業である弁護士の相談料金相場の10,000/h前後と比べ、ずっと安く引受けています。
もちろん資格難易度の違いなどもあるので、単純比較できませんが。

繰り返しになりますが、相談で報酬を提示している事務所は稀です。
相談を考えている人には、耳寄りなお話?でしょうか。
建築士に話を聞くときは、弁護士さんのようにお金がかかるんだ。
読者の皆さんの多くは、そう思っていないでしょう。
実際にそれが世間ではスタンダードです。

建築業界自体も、どうも相談は営業経費(努力)と考えてしまう傾向が強いので苦難は続きそうです。

私はお相手の真剣度をみたくて相談料を提示したりしますが、たいていはそれ以上相談しないケースがやはり多いです(涙)。

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