私は建築を学校で学んでいません。
建築設計事務所で仕事をしながら学びました。
働きながら、それってどういった意味??、といった言葉が沢山。
建築の学校で当り前に使用されている言葉が、私の予備知識としてなかったのが原因です。
実際に体験して、初めて意味が分かる言葉もありました。
感覚・イメージが伴わないと理解できない言葉。
建築をしていない読者さんも同じ状況だと思いますので、それらの言葉を解説。
そして比較的読みやすい本を書いている、と思える建築家をご紹介しています。
建築を楽しむため、言葉や書物を通して理解を深めていくこともあります。
でも、何言っているか意味わかんないよ、と思うことは多くないですか?
私は上海にあるアトリエ系と称される建築設計事務所で建築のキャリアをスタートしました。
それ以前には建築を学んだことは無く、仕事で建築を覚えた独学系です。
帰国後にライセンスを得て、現在は設計事務所を主宰しています。
東京と長野県で活動しており、塩尻市と松本市で”誰でもできる建築教室”も主宰。
それら建築などに関係する情報を、ブログで記事にしています。
私がはじめて建築と接したときに意味不明だった言葉をまずは2つ説明。
・スケール感
・スタディ
そして、ビギナーでも比較的読みやすいだろうと思う建築家を紹介。
独学だったので痛感してますが、建築家は関係者以外の人にも業界用語を使いがち。
しかも調べて分かるような言葉ではなく、感覚として理解してないと分からない言葉を使います。
本も難解なものが多く、スタートからつまづいてしまう可能性も否めません。
そこで、読者の皆さんが建築を言葉からも楽しむための記事を書きます。
言葉や意味は少しづつ知っていくしかありません。
それでも理解が深まるほど、さらに難解な意味にも臨めるようになります。
その繰り返しが、建築を言葉から楽しむコツ。
建築の難しいコトバの一つによく哲学用語があげられます。
思うにこの難しさは感覚ではなく、根気の問題だと思ってます。
私もそうでしたが、原典を根気よく読んで調べよう。
以上で解決すると思います。
スケール感
未だにどのように説明すれば理解が進むのか、迷うコトバの一つ。
建築界隈以外で耳にした記憶もあまり無い、面白い言葉。
単体の要素では決まらない、相対的な大きさ、広さ、間、感覚、、、。
と説明して、よく分かりませんの声が聞こえてきそう。
例えば100角の柱と1000角の柱と聞いて、1000角の柱って大きく感じませんか。
数字の話を少しだけ間にはさみます。
通常建築物単体で建築家が使う単位のない数字は、mmを意味してます。
100(mm)角は10cm×10cmの柱。
1000(mm)角は100cm×100cmつまり1M×1Mの柱。
cmセンチやMメートルのほうが、読者の皆さんは想像しやすいかもしれませんね。
今回はcmとMで書いていきます。
さて、1M角の柱。
この言葉だけきくと随分大きな柱を想像すると思います。
もう少し想像を進めましょう。
3M×3Mの部屋の真ん中に、この柱がドンと立っている部屋を想像して下さい。
大きいな柱どころか”壁!!!”って印象を持つと思います。
では一辺を10倍して、30M×30Mの部屋の真ん中ではどうでしょう。
3M×3Mの部屋よりイメージが変わりませんか。
今度は壁のようではなくて、きちんと大きな柱として認識できるはずです。
前者のとき、その柱はスケールオーバーとなります。
ある空間の使われ方、実現したい印象に対して、それぞれ実現したい高さ・広さ・縦横高さのプロポーション・柱・窓・扉・家具、、、、の相対的な大小関係があります。
これらを図面や模型やパースなど、想像やミニチュアールの世界で感知し認識して組み立てられる感覚が、スケール感。
スケール感ないねと言われたら、建築家としてはお恥ずかしい話し。
先ほど説明したことが想像できていない、実現したい印象になっていない(少なくとも発言者からはそう思われてる)、といった建築(家)には痛いコトバ。
スタディ
もし読者の皆さんが建築家と打合せをしていたとします。
もう少し所内でスタディしてきます、と言われたらどんなことを想像するでしょう。
また建築誌を眺めて、所内で何度もスタディして、と書かれていたら何のことを言っているか分かりますか。
文脈によるかと思いますが、勉強してきますや検討してきます(調べてきます)あたりを想像するでしょうか。
建築経験のない事務所勤め当初の私もそんな想像をしていました。
所長と同僚(両名とも建築学科出身)が、「じゃあ、スタディしようか」という会話が意味不明でした。
やっていることは、模型を作ったりスケッチしたり図面を描いたり。
当時の私はそれが勉強や検討・調べ物の行動とは思わず、一体何をすればよいか全く分かりませんでした。
先に意味をざっくりと説明。
”あらゆる可能性を探ろうぜ(気力・体力・時間・お金が続く限り)”です。
普通の勉強や検討とは、ちょっと意味合いが違います。
決めていくための項目で認識していないのは何なのか。
取りうる可能性に何があるのか。
何処かで実証されているのか無いのか。
等など、、、ひたすら探ります。
最初から着地点を決めずにそれらをおこないます。
とりあえずカタチにしてから決めてみようぜ、の世界。
そこで建築関係者以外の人にはちょっと想像がつかないほどの、図面・スケッチ・模型が作られます。
正解がはっきりしないことを作るので、幾ら作ろうが続けられる限り終わりは無いのです。
建築にも究極なんてありません。
その瞬間瞬間で最良だと思う可能性をひたすら探る。
それがスタディ。
特に建築は実物の大きさで試行錯誤できません。
それが、膨大な量の図面・スケッチ・模型を通して行われるのです。
建築家の本と言葉
比較的分かりやすい言葉を選ぶ建築家と本などをご紹介します。
私は建築の素養が無く独学(仕事をとおして)で建築を経験したので、読み物に関しては随分と苦労しました。
何を言っているのか、本当に分からないんですね。
理由としては、建築の歴史とその時代背景、この素養が無かったから。
これらを知っていて当然のように言葉が進んでいく本が多いです(笑)。
建築史はもちろんですが、時代時代の建築家、世界史、建築・哲学(用語)、知識の積み重ねがないと読めない内容が多かったな、が私の印象。
これは読書量と調べる根気があれば時間と共に必ず解決していくもの。
ただし私達のように建築を生業にしたいという人以外には、もう少し気楽に建築の書物に接してもらいたいと考えています。
安藤忠雄さん(1941~)。
鉄板です。
安藤さんも独学で建築を始めたのが理由なのか、建築界隈の常識ですといった言葉で話を進めない本が多いです。
どちらかというと建築を自身の人生観と結びつけて語ることが多いので、先にあげたような素養を必要とせずに読むことができます。
藤森照信さん(1946~)。
建築史家で、共同で建築設計もされている方です。
先ほど、建築史や世界史の素養がないと意味が分からない本が多いと言いましたね。
藤森さんの本は、歴史自体を知っていて当然として読み物にせずに、その歴史自体をやさしく説明してくれる本が多いです。
お会いしたことはありませんが、ネアカな方なんだろうなと思わせる読んで楽しい気持ちになれる本がたくさん。
石山修武さん(1944~)
難易度はちょっと本にもよります、、、が個人的な感想です。
気候風土や地域などを題材にした本は読みやすいと思います。
読みやすい本があるかと思えば、相当に難解な本もあります。
今読んでも意味不明な本も沢山。
優しい方なのだと思います。
分厚い知識の裏側に、すっと分かりやすい読み物もたくさん用意してます。
日本のセルフビルド建築の先駆者。
姉島和世さん(1956~)
本ではなくて、対談の文章などからの印象。
迂遠な言いましや、知識を前提としたような言葉が少ないので分かりやすいです。
それでも内容が薄いなんてことはなく、建築に対する情熱や哲学を十分に知ることができます。
ずっと続くピンポンのラリーを見ているようで、すっきりテンポよく楽しめると思います。
さて挫けずに建築の厚みがついてきたら、磯崎新さん(1931~)の本に是非チャレンジを。
冗談を交えながらの体験など面白く読めるものもありますが、知なくして対応できない書物が殆どです。
冗談のように記述しても、それを楽しむのにも知識の裏付けが必要だったり、、、。
言葉と真剣勝負の連続です。
やさしい本からはじめよう
私自身の経験から普通こんな言葉の意味知らないよなという単語と、この建築家の本なら読みやすいだろう、というものを紹介しました。
建築業界独特な言葉に関しては、思い出した時々で記事を更新して説明していきます。
まずはストレス無く読める本で、建築の言葉に少しづつ慣れるのが一番の方法。
読んでいる間に、建築をもっと楽しんでる自分に気付けるでしょう。
建築(家)の言葉を少しづつ覚えていくと、建築やその文章を見る楽しみが増えますよ。
記事内で紹介した読みやすい建築家の本などは、別ページにまとめました。
気になる読者さんはどうぞ。
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