C-3 設計前と自主施工前に大切なこと【文字と模型を使いこなす】

C 誰でもできる建築教室とDIY

建築は規模が大きく、実物を作りながら考えるプロセスが取りにくい分野。
そのため図面や模型といった、小さな世界で検討を繰り返します。
それら検討の方法は、日常の計画・設計・DIYなどの工事・製作に役立ちます。
難しい技術的なことは、誰でもできるわけではありません。
しかし、簡単にできることは幾つもあります。

空間のデザインを自分でしようとし、イメージが湧かないことはありませんか。
雑誌などを参考に、”こんな感じ” といった漠然とした他者のイメージに任せてませんか。
日常生活のDIYや製作を場当たり的にして、失敗したことはありませんか。

それらの原因は、事前にすべきことの方法を知らないから。

私は東京と長野県で活動しており、建築設計事務所を運営しています。
学校ではなく仕事で建築を学んだ独学の建築家。
長野県で空き家再生や地域デザインのこともしています。
オフィス機能は両方に用意していますが、住いは長野県。
活動圏内である、塩尻市と松本市で”誰でもできる建築教室”を月2回定期開催しています。
それら建築などに関係する情報を、ブログで記事にしています。

この記事では以下の内容を紹介。

・空間やデザインのイメージを拡げる方法
・自主施工・製作前に擬似工事する方法

建築・内装の空間やデザインを考えることは、専門家以外でも可能。
専門的な技術や知識が多い分野なので、全てが可能ということではありません。
しかし簡単なことをするだけで、自分の計画をより具体的に空間やデザインへ反映させることができます。

誰でもできる建築教室の生徒さんにも、内容に応じて記事の方法を実践してもらってます。
建築インテリアとは全く関係ない人達ばかり。
それでも生徒さん皆が出来ている方法なので、日々の生活で試せる内容です。

建築教室の生徒さんには、具体的な建築や内装の設計・デザインをする前に必ずしてもらう大事なことがあります。

・自分がどんな空間を望んでいるのか、思い切りイメージを膨らませてもらうこと。
・DIYを念頭においている生徒さんには、模型を使って立体を組み立てること。

イメージの具体化

ここで大切なのは、最初からイメージを他者に頼らないこと。
雑誌の切り抜き、実際の内装写真などから始めないことです。
理由は、自分にとっての空間やデザインにならないから。
そのまま計画を進めると、完成後使用した時”なんか違うな”と感じることが多くなります。

住宅を設計したい生徒さんを例えに説明。

まずどんな家にしたいのかを、文字で書けるだけ列挙してもらいます。
建築は法規・構造・費用など様々な制約があって、初めのイメージがどんどん削られます。
初めのイメージが貧弱だと、時を経るなかでどんどんつまらない空間になる仕組み。
そこで好きなだけ自由に書いてください、と伝えます。
けれども、どうもぼんやりした言葉しか出てこない生徒さんが多いのが実情。

建築などのクリエター職ではない人は、イメージを拡げる手段が少ないのかもしれない。
長年生徒さん達と接して、どうやらイメージを具体的にしていく手段を知らないのだと分かりました。
そこで、生徒さんからでてくるイメージのキーワードを具体的にしていく手助けをしています。
方法としては、”言葉に枝をつけていく”です。
これは一人問答でも十分できるので、ぼんやりしたイメージしか出てこないときは是非お試しを。

例えば以下のようなイメージを生徒さんが書いたとします。

1:明るくて広いリビングがほしい
2:趣味の部屋がほしい
3:友達が沢山呼べるような家がいい
4:きれいな眺めがある部屋がほしい。

・・・・。
実際は数十単位で列挙してもらいます。
大体こんなぼんやりしたイメージを書き尽くすと手が止まります。
そして、それ以上イメージが進みません。

そこでその言葉や単語に、意味や理由を問うような質問を私から生徒さんにします。

1-問 
あなたにとって明るいとはどんな光?
朝食時、趣味の絵を描くとき?
何に対して必要な光や明るさ?
広いとはどんな広さ?
天井が高い部屋?
面積が大きい部屋?
何をするための広さ?

2-問
どんな趣味?
どんな道具が必要?
どのような作業が発生する?

3-問
沢山とはどのくらいの人数?
友達はどんな人?
どのくらいの頻度で、どこから来ます?

4-問
何を眺めていると綺麗だと思う?
どんな環境のところに家を建てたい?
何を眺めたいと思う?

こうして相手の言葉を引き受け、少しだけ具体的な質問をします。
すると相手のイメージも少し膨らみます。

1-2
とにかく窓が大きく光が沢山入るリビング。
普通より少し天井が高いリビング。

2-2
サイクリングが好き。
自転車やパーツを壁にかけられるようにしたい。
細かい作業ができる明るさ、作業台が必要。
外から直接入りたい。

3-2
10人ぐらい集ってパーティーしたい。
離れた地元の友達も呼びたい。

4-2
自然や緑に囲まれた生活がしたい。
田舎に建てたい。

それについて、また問いかけをします。

1-2-問
あなたが想像する普通の高さとは?
大きい窓は寒さや暑さの影響を受けますが、とにかく明るさを優先する理由は?

2-2-問
出入り以外に、外と趣味部屋にどんな関係性を持たせたい?
壁に掛けた自転車やパーツをどんな風に見せたい?

3-2-問
パーティーだと食事など楽しみますが、どんなキッチン?
遠くから来る友達はゲストルームに泊まる?
田舎に家を建てると、遠くからの友人には不便では?

4-2-問
緑とは山?林?庭?
山の麓のような環境?、遠くから山を眺めるような環境?
イメージと近しい場所で、特徴を書き出してみませんか?

書き足していると新しいキーワードが出て、さらに問いをしていくと無数にイメージがでてきます。
これ以上イメージを出せない、飽きてきた、といった段階で初めて図面やスケッチなど具体的なカタチにします。
自分にとって必要なイメージが具体的にならないと、図面やスケッチなどのカタチならないのです。
設計・デザインや工事前には、大切な工程となります。

一度製作や工事が進み始めると、後戻りが大変です。
せっかくなら後悔が無いよう、自分が納得できる優先順位を決められように、沢山のイメージをだして考えを俯瞰しましょう。
予算、法規、構造的な制約、、、。
様々な条件の中で、必ずそのイメージは小さくなっていきます。
それに負けないほどのイメージを持って望むようにして下さい。
なにより大切なのは、自分にとって必要なことを具体的な言葉や文字にすることです。

イメージ具体化の利点

・限られた予算で、自分の優先順位を整理できる
・自分にとってのメリット・デメリットを確認した上で取捨選択するので、後悔が少ない
・矛盾点が出てきたときに、あんまり優先したいイメージでは無かったなど気付ける
・具体的な条件が、空間構成やデザインのイメージ、素材感などを決定する判断材料になる
・与えられた箱(建築・イメージ)に自分の行動を縛られない

模型と工事工程

建築教室を随分と長い間続けています。
自分でDIYしようとする生徒さんの喜ぶ内容に、共通点があることに気付きました。
その共通点は、軸組み模型に興味をもつ人が多いこと。
軸組み模型というのは、建築物であれば柱や梁など構成材を現しにした模型。
家具などであれば、天板や側板などが張られていない下地組みの状態にしたもの。
壁や床など仕上げのない、スカスカな模型をイメージして下さい。

線材を一つ一つ接合してつくる模型なので、細かい作業が多くて大変です。
面倒な作業なのに何故興味を持つのか尋ねると、どうやら造る工程が確認できるのが面白いようです。
どうやら図面だけでは立体の想像がよくできず、仕上げを施すまでの工事過程が想像しにくい様子。
そこで実際にセルフビルドしたい生徒さんには、下地組みや接合も含めて設計をしてもらい模型で確認してもらいます。

模型で線材を使って下地組みを作っていくと、基本的に実際につくる順序で組み立てないと綺麗に自立しません。
ですから軸組み模型の組み立てを通して、擬似的に工事をしてるのです。

どちらの材を勝たせるかの確認もできます。
材を勝たせるというのは、例えば柱と梁のように2本の棒材を角が出来るよう直角に繋ぐことを想像してください。
柱の上に梁が載るつなぎ方と、柱の側面に梁が繋がる方法がとれます。
このように複数の材が接するときに、優先して通す材を”勝ち”と言います。
今の例だと、前者を梁勝ち、後者を柱勝ち、と言います。
そのときに部材の長さや数量も立体を見ながら視覚的に確認できます。
ですから部材の数量を決めるのにも役立っています。

実物大で造りながら考えるのも、セルフビルドの面白さの一つ。
しかし、前もって確認したほうが手戻りは少なくて済みます。
材料代も安くはありません。
時間と共にお金も大事に使ってください。
軸組み(下地組み)模型を先につくってみると、工事がぐっとスムーズになります。

軸組み模型には1mmから5mm程度の桧の角・扁平角棒をよく用います。
切るのが大変なときは、バルサ材を所定の幅に切って代用してください。
バルサ材であれば、力の弱い方でもカッターでサクサクと切断可能です。

自分なりの空間とデザインを考える

この記事では、 設計前と自主施工前に大切な工程と方法を説明しました。
補足すると、自分なりの(自分にとって本当に必要な)空間やデザインにしたいとき、に大事な工程。
つくりながら考えるのも、私は製作過程として賛成もします。
ですが工事作業に多くの時間を取られます。
そのため、本当に自分にとって必要な空間やデザインなのかを俯瞰して考えられないケースが多いです。

文字でカタチにすること。
模型でカタチにすること。

実際の工事に比べたら、ずっと少ない時間と労力で検討ができます。
それは、より多くの可能性を検討できる時間がとれる、ということ。

今回紹介した方法は、簡単な道具材料ですぐに試せることばかり。
建築にまつわることを、ブログ内で沢山記事にしています。
それらを参考に、小さな簡単なことから先ずはカタチにしてみましょう。

Pocket
LINEで送る

コメント

タイトルとURLをコピーしました