D-1 木造住宅【日常で知っておくと便利なこと】

D 住いと知識

木造住宅の改修やDIYの相談をよく受けます。
今回は木造住宅に関する基本的なことを記事に。
木造軸組み工法の構成はとても簡単。
手入れ次第で寿命もずっと長くなります。
知っておくだけで、DIYやメンテナンスや土地選びなどに役立ちます。

・住宅を自分で手を入れるなんて、、、。
・木造住宅のメンテナンスって自分でできるの?
・そもそもどこを注意して見ればいいの?

皆さんにとって一番身近な建築物は、住宅、かつ日本で最も量が多い木造だと思います。
それでも知らないことばかりで、家に対して何をしてよいのか分からないでしょう。
あるいは、自分で何かをしようとさえ考えたことが無いかもしれません。

私は仕事で建築を覚えた、独学系の建築家です。
修行先の上海から帰国後にライセンスを得て、現在は設計事務所を主宰しています。
東京と長野県で活動しており、空き家再生や地域デザインのこともしています。
長野県塩尻市と松本市で”誰でもできる建築教室”という一般者向けの教室も主宰。
それら建築などに関係する情報を、ブログで記事にしています。

この記事では木造住宅に関する以下の内容を紹介。

・知っておくと便利な寸法
・傷みの原因
・手入れや注意点

今の商品住宅のほとんどは、あまりメンテナンスの必要がないようしっかり造られています。
その間に大きな災害などを経験しなければ、ですが。
建材の耐候性も日々向上。
近年の新建材住宅であれば、ジョイントシールの打ち換えや塗装を定期的にする程度でもかなり長持ちします。
しかし、まったく手入れをしなくてよいわけではありません。

周辺環境から寿命を縮めることもあります。
中古住宅を視野に入れている人には、メンテナンスや改修は必須でもあります。
自分で改修をしたいときもあるでしょう。

そんな時に少しでも自分で出来ることがあれば、出費を抑えることも木造住宅の寿命を延ばすこともできます。

誰でもできる建築教室の生徒さんにも伝えている内容にもなっています。
本当に簡単な知識やルールなのですが、生徒さんも日々の改修やメンテナンスに活かしてます。
しかし家に関することは全てプロがするものと、伝えるまでは思い込んでいる様子。
木造住宅では自分で出来る些細なことが沢山あります。

この記事では木造住宅の七割以上をしめる、軸組み工法を念頭に説明しています。
ツーバイフォー工法、プレファブ工法、CLT工法では事情も異なります。
軸組み工法は柱と梁などの線材を基本とし、後者は壁などの面材を基本とした工法になります。
もちろん、木材に対する注意点は同様ですが。

木造軸組み工法の寸法体系

910、1820、2730、3640、、、、。
主宰している、誰でもできる建築教室の生徒さんがよく使う数字。

最近の家は柱が見えないものが多いですが、もし柱が表しになっていれば柱と柱の中心を測ってみましょう。
多少誤差はあるかと思いますが、上記の数字のどれかになっていると思います。
先ほどの数字は、構造や造作部材の間隔を表しています。

少し言葉の説明。
柱が見えない壁を大壁、柱と柱の間に壁があるものを真壁と言います。
建築教室の生徒さんの中には、大壁の家をリフォームされる方もいます。
そのときに上記の寸法ルールを知っていれば、壁中のどの辺りに柱があるのか推測ができます。
部屋の角や窓の位置等から先ほどの寸法をおえば、大凡の見当がつく仕組み。
DIYなどで、柱に接続したい棚などがあるとき役立ちます。

先の数字は  という言葉が基準になっています。
柱と柱のあいだ(の長さ)を意味する言葉でした。
それに尺寸法の体系が与えられ、一間(いっけん)を6尺として約1818.18mm。
つまり先ほどの1820に該当します(尺303mm、寸30.3mm)。
半間は910、一間半なら2730、二間なら3640。
大抵の木造軸組み工法の住宅は、今でも柱間寸法はこれが基本になっています。

ホームセンターなどで見かける合材も、これらの数字がもとになってます。
3x6板といえば約900×1800(3尺×6尺)。
4×8板は約1200×2400(4尺×8尺)。
なので尺寸がもとになっている間で柱を建てると、板材などの無駄がでにくい。
これを歩留まりがよいと言い、材料費や加工費を抑えられます。
寸法調整のため切断したりして、余計な端材がでないという意味。

家を構成しているその他の材も、455(910/2),303(910/3)などの間隔で並んでおり、基本的には見えていない部材の場所も簡単に予測ができます。
例えば構造柱のあいだには、間柱という壁などの板材を留めつける材が柱と平行に配置されています。
間柱は基本的に構造柱の芯から455(910/2)のピッチで配置。
図面などでは@455のように表記されます。

余談。
寸法としではなく概念として”間(ま)”という言葉は日本の建築家によく論じられる言葉です。
代表的なところで、磯崎新 間展 MA;Space- Time in Japan などで検索してみて下さい。
他にも 間 建築 論文 などで検索すれば、たくさんの建築関係者が論を述べています。
東京の乃木坂にTOTOさんが運営している、ギャラリー・間という建築メインの展示場があります。
建築に興味がり、まだ足を運んだことのない読者さんは是非行ってみることをお薦めします。

木造の傷みの原因

長野県塩尻市木曽平沢という町で、元空き屋を友人とセルフリノベーションして運営中。
おとなりの奈良井宿でも、仲間と共に古民家を改修した土-とおいち-という店舗兼ギャラリーの運営もしてます。

木曽平沢のリノベは、読者の皆さんが想像しているようなお洒落なものではありません。
耐力壁を追加することも含めて、構造全体のオーバーホールをしています。
その建築物はとにかく腐れの部分が多くて、あちこち構造材を継ぎ足しでリペア。
なぜそんなに構造木材の腐れが多くなってしまったか、幾つか理由があります。

現代の基礎ではなく、大石を基礎代わりにしてる。
土台と地面からの距離が殆どないことが原因。
古い家ではあることです。
土台など構造材の名称がよく分からない読者さんもかと思います。
下記に木造構造部材の名称を図説したシンプルなページがありました。
リンク先を記載しておきます。
木造軸組工法の各部の名称

隣地家屋との間隔がほぼ無く、地盤高さがまちまち。
水の道と水溜りができていたのが原因。

土台や柱下部がかなり腐食していました。
適切な時期に適切な手入れや補修をしていれば、と思うところ。
少し詳しく説明します。
こちら側よりも高い隣地の土が、長い時間をかけて少しづつ床下に流れていた。
これを放置していたのが大きな要因。
木材は湿った土と接していると分解が早くなり腐食していきます。
もととも地面との距離がそれほどなかった石の基礎に加えて、堆積した土が雨などで水分を含みました。
そのせいで土台が水分を含んだ土に埋もれてボロボロになっていました。
土台が湿ってしまうと、吸い込みで柱の下部も腐食しやすくなります。
今回は土の堆積を免れた個所のみ、今でも問題ない状況でした。
水と土恐るべし。

木材が腐る要因は、空気、湿度、で繁殖する菌。
ですから水中にずっと接していれば、空気中よりは腐食がおそくなります。
水没している木製杭などが長時間腐らないのは、そうした理由。

ちなみに、土壁も耐力壁を設置するために一部解体しました。
耐力壁とは地震や風などの力にたいして、抵抗してくれる構造壁。
土壁の中って想像できますか。
小舞といって雑木や竹を藁で結び合わせた格子状の下地があり、その上に土を塗りつけてます。
お茶室などで、雑木や竹の格子が窓に表しになっているのを見たことありませんか。
あれは、土を塗りつけるための下地がそのまま見えている状態の窓。
今回解体した土壁の雑木下地は全く腐っておりませんでした。
調湿機能により、土の過度な湿潤状態が続かなかったからです。
適度に乾燥した土で木材自体は逆に保護されます。

木造住宅の手入れや注意点

古いものだと、まだまだ石の上に土台をのせた家もあります。
特に空き家住宅を探している読者さんは、そうした物件を目にする機会も多いはずです。
しそうした木造住宅と接することがあれば、せめて外周部だけでも気をつかって下さい。

土台廻りの土を少し掘り下げる。
枯葉は出来るだけ取り除いてあげる。
などをして土台を常に確認できる、乾燥状態に保ってあげてください。
それだけでも、十分寿命をのばせます。

水についての点検も忘れずに。
水と土と菌の木材腐食に関して説明しました。
日々の点検の重要性も覚えておきましょう。
私は古い建築物の改修や不動産物件を確認する機会が仕事柄あります。
雨の多い日は、水の道を確認します。

木造ならある程度は水の経路を追っていくことが可能。

私はいつも下から追っていきます。
足元、基礎や土台廻り、その周辺の土が他よりも湿っぽいときは、建物外部から水が流れてきている個所。
樋の欠損や樋を伝わって水がおちているケース。
隣地との高低・勾配差で水が流れてきているケースが多いです。
最近の住宅であれば雨水も敷地内に停滞しないように、水はけがとれる計画にしているはずです。
しかし古いお家だとあまり気にしていない敷地も多いです。
また長い時間のなかで建築物直下の地盤が沈んだり、周囲の地盤が高くなってしまったりしているケースもあります。
建築物を中心に敷地が凹やすり鉢状になっていたら、あまり良い状態ではありません。

・敷地を建築に向かわない排水勾配にする
・側溝・浸透桝などで、外構の水はけをよくする
そうした工夫で建築の寿命は延びます。
もっと手軽な方法としては、建築物周囲の土を少し掘り下げて砂利など敷き詰めます。
部分的に周囲の水はけをよくするだけでも、効果はあります。

内部は柱や梁を水が伝ってきますので、それを追っていきます。
たいていは屋根下屋部分にいきつくことがほとんど。
バルコニーなどの床突出部から伝わってくるケースも多いです。
特殊な形状ではない梁に伝わっている水は、流れる方向で建築物の傾きも把握できます。
柱や梁が現しの状態ではない建築物でないと、内部の水経路の確認はしにくいです。
壁や床などをはがす大きな改修をするときは、よい機会ですので確認を。

木造軸組み工法の住宅は、構造の上を水が伝わってくれるので比較的見つけるのは簡単。
水の経路を、建築や敷地を観察して原因を発見できると案外楽しいもの。
特に子供は謎解きをしているみたいなのか、面白がってくれます。
雨の激しい時におこなうのは、危ないので止めて下さいね。

余談。
鉄筋コンクリート造のように構造体の中に漏水経路があると、素人ではお手上げ。
鉄筋コンクリート造の漏水調査方法は様々。
紫外線で着色反応する特殊な溶液を建物全体に流し、漏水経路や個所を特定するような方法もあります。
それだけ特定が難しいということです。

基本を知ろう

木造住宅と接するときに知っておくと役に立つことを幾つか紹介しました。
今回は日本の木造住宅で多く採用されている、軸組み工法を念頭に記事にしてます。
寸法体系のところで説明しましたが、簡単な原則で構成されています。
基本だけでも知っておくと、日常の改修やお手入れや点検に役立ちます。
構造体を健全に保っていれば、昔の木造住宅も長い寿命を得られます。

木構造の基本を知りたい方は、建築教室の生徒さんが読んでいた本を紹介しておきます。
私から薦めたわけではなく自主的に購入していており、素人でも分かりやすいようです。
難しいことを覚える必要はありません。
寸法体系や構造材の構成を、挿絵など眺めて確認するだけでも十分。
大抵が同じ原則で木造住宅は建てられています。
応用が利きやすいので、自分の住宅にあてはめて観察することもできます。

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