これから独学で建築家を目指す皆さんのなかには、そもそも自分に向いているのかや仕事ができるか等の疑問や不安を感じる方もいるはずです。
そこで向き不向きの問題と、質問されることが多い建築士資格と仕事の問題を経験談から説明していきます。
先に安心させておくと、どちらも問題ではないという話。
建築家を目指してみたが、自分には向いていなさそう。
独立したけれど仕事が取れなさそう。
せっかく志したことが、気持ちで挫折してしまうのは悲しいことです。
少しでもそうならない手助けをできればと思います。
私は上海にあるアトリエ系と称される建築設計事務所で建築のキャリアをスタートしました。
それ以前には建築を学んだことは無く、仕事で建築を覚えた独学系です。
帰国後にライセンスを得て、現在は設計事務所を主宰しています。
東京と長野県で活動しており、塩尻市と松本市で”誰でもできる建築教室”も主宰。
それら建築などに関係する情報を、ブログで記事にしています。
この記事では、
自分は建築家に向いてるか?
ライセンスが無くても独立して仕事ができるのか?
といった不安を解消するため、私を含め周囲の建築家達をご紹介します。
色々なタイプの人間がそれぞれのスタイルで建築の仕事をしています。
それらを眺めてみれば、自分は***だからと建築家を諦めない気持ちになれると思います。
トップランナーの建築家を目指す目標は持つとしても、一握りの人がなれる厳しい世界。
しかし様々な仕事の仕方があるということ知っていれば、独立後の不安も少ないでしょう。
まだ若輩の身なので、一流の建築家になる方法は経験談としては語れません。
それでも私のように独学と独力で建築家になり、独立して建築の仕事を続けることは十分可能です。
建築(家)だから***だ、は存在しない
建築家に向いている、或いは向いていない人のタイプなどはありません。
理系ではないから、デザインセンスがないから、社交的ではないから、、、。
様々な理由で建築家を諦める必要はありません。
先の例に挙げたような建築家も沢山います。
余談ですが見かけ上のイメージは一般にあるようです。
私はモノトーンのTシャツ、ラフなジャケット、ヨージ(yoji yamamoto )のパンツ着ていたら「建築家っぽい」って言われました(笑)。
大昔、建築家のイメージは蝶ネクタイの時代もあったと年配の建築家から。
近代建築巨匠の一人、ル・コルビュジエ(1887~1965)が身に付けていたのを日本人建築家たちが真似た。
まだ図面が手描きだった時代に、ネクタイの帯が図面を擦らないで便利だった。
などなど真相は如何にですが。
コルビュジエは建築を学んでいる人に今でも影響を与えている巨匠です。
知らない読者さんは是非。
有名人の仕事はメディアで知ることができます。
独立後にトップランナーのような仕事を想像すると不安を覚えると思います。
ですが、それ以外でも建築の仕事やスタイルは無数。
独立して建築の仕事ができるのかを過度に恐れる必要はありません。
また建築士資格がなくても建築の仕事はできます。
そうした人達とも沢山会ってきました。
上海の建築設計事務所に勤めていたとき、所長・私・同僚で性格や思考や仕事のスタイルに共通するところはありませんでした。
独立して様々な建築家に会いましたが、同様です。
建築士免許がなくても建築の仕事ができるのは、建築士事務所に勤めるのは無資格者でもできるから。
また建築士しか許されていない独占業務が存在しますが、それ以外の建築にまつわる仕事は免許がなくてもOK。
独立して建築士の独占業務をしたいときは、建築設計事務所の開設が必要。
建築設計事務所の開設には管理建築士をおく必要があるため、自身が管理建築士になるか管理建築士を雇う必要があります。
要するに自らの署名で独占業務を行わない限り、仕事をするのに建築士の資格は絶対条件ではありません。
様々な建築家の例
まず私の上海修行時代の所長達と同僚を紹介。
所長(日本人)は、早稲田大学建築学科卒業後、山本理顕さんの事務所で修行をしました。
赴任先の上海で仲間と事務所を立ち上げて、その後自身の事務所を開設。
大変頭の回転の早い人で、理詰めで物事を進めていきます。
本質を抽出し、それを幾通りもの可能性に組み立てられる能力があったなという印象です。
1の出来事から50~100ぐらいは予測できるような人。
あまり社交的な性格ではなかったので、人が集るタイプの人ではありませんでした。
もう一人の所長(中国人)は、九州にある大学へ留学して建築を学びました。
その後、九州の中堅組織事務所で働き上海で独立。
自分の理論や美意識を持っていましたが、相手の気持ちを汲んで案や設計を進めるタイプ。
相手が出してきた意見に対してアドバイスをしますが、自らのを推してくることはしない人でした。
優しくて控えめな所長。
同僚は、少しヒッピーの雰囲気ただよう楽しい奴。
大阪芸術大学の建築科を卒業後に、私と共に上海の事務所で働きはじめます。
理屈や計算などあまり細かいことは気にせず、建築自体をとても楽しんでいました。
大雑把でしたが、建築や設計に関しては事細かにずっと考えるギャップを持つ同僚。
私自身は学業で建築を修めず、その上海にある設計事務所から建築のキャリアをスタートさせます。
所長の意見でも素直に従えない時もあり、教えてもらいながら覚えるよりは観察して覚えるタイプでした。
反対に同僚は、相手のアドバイスを忠実に行動へ反映させるタイプ。
事務所を主宰している30代の友人建築家の例。
専門学校で建築を学び、アトリエ事務所勤務後の独立当初から家庭があり子供も産まれていました。
独立当初は元所属先の事務所から仕事をもらったり、他社案件の外部設計者として活躍したり、自らの名前を出せないような仕事を含めお金を稼ぐための仕事を多くこなしたそうです。
建築の様々な仕事はトップページB群の別記事で色々と説明していますので、そちらでご確認を。
稼ぐ仕事をきちんとこなしてきた経験が、自身のデザインを反映できる仕事の基盤をつくったと。
家族や仕事、設計業界の問題など幅広く気を使いながら、建築家としての自負を持ち事務所を運営しています。
知り合いの50代後半建築家の例。
社会人で営業職を経験後、早稲田大学で建築を学びなおし、大高正人さんの事務所で修行後に独立。
お客様第一主義で、組織内のチームワークはあまり重要視していないタイプ。
協調性は有りませんが、行動で解決していく人です。
もと営業職が関係しているのか、お客さんの要望をいかに効率よく反映させるかをモットーに仕事をされています。
お客さんさから図面作成の仕事を請け負い、外注設計者を束ねて管理をするような事務所を運営。
仕事を得るため、よく営業回りをしている建築家さんです。
建築士ライセンスと仕事の話し
建築士免許がなく事務所を運営している事例を、今までの経験から少しご紹介。
・海外で建築の仕事や事務所運営をする
上海時代、日本人の運営している建築事務所の所長でライセンスのない人もいました。
私の修行していた設計事務所の日本人所長もそうでした。
もちろん現地のライセンスもありません。
設計・デザインのコンサルとして契約し、仕事を取っていました。
ライセンスの必要な図面は、中国で設計院と呼ばれる実施設計を専門等とする別組織にお願いします。
海外プロジェクトをこなす有名な建築事務所でも、初めはその国々のライセンを持ってない、持つ人を雇ってない、こともあります。
そんな時は、現地のゼネコンやローカルアーキテクトと一緒にプロジェクトこなします。
ライセンスが建築家や建築の仕事を決定する要素ではないことを知っておいて下さい。
・デザイナーとして建築の仕事をする
デザイン事務所として運営をします。
建築設計は、建築士の独占業務が法律で定められています。
建築設計の知識やデザインの技術があれば、法規上自分のできない業務のみを建築設計事務所へ外注してプロジェクトを完遂できます。
案件を受注したり取りまとめる役割が読者の皆さんなら、建築家や建築を実現した人間として皆さんの名前を世間に表明できます。
建築の美術やデザイン方面を仕事にし、資格が必要な部分は外注で済ませます。
・外注屋さんになる
独立後のファーストステップとして参考に。
建築設計事務所は自分の事務所だけで設計業務をせず、外注に出すところも沢山あります。
私もそうした仕事をお願いする時がありますが、外注さんには建築士免許をもっていない方々も大勢います。
途中経過の作図をしてもらい、最終的な設計図書の責任は設計事務所自体が持って図面を取りまとめていくので、外注さん自身に設計士の資格は必ずしも必要ではありません。
独立して設計やデザインをそうした環境で学びながら、技術者・デザイナーとしてステップアップしていく道もあります。
・美術作家として建築を扱う
デザイナー業にも近いのですが、建築以外の表現活動をしながら建築に携わる仕事もあります。
空間を利用したインスタレーションなどをしている作家さんが、内装や建築のディレクターとしてチームに入るケースなど。
その中で建築士の資格が必要な仕事は、べつの事務所が担当します。
若しくは管理建築士をやとって、建築設計事務所の業態で仕事をする美術作家さんもいます。
日本にも杉本博司さん(1948~)のような著名な美術作家が、建築を対象にした作品を発表されてます。
美術の専門誌だけではなく建築の専門誌でも紹介をされますので、建築家(ご本人はそう認識していないでしょうが)のように業界も意識しているのかと。
建築を仕事にする個人や事務所は、殆どが建築士の免許を持って運営しています。
私自身はライセンスを得る道を選んだので偉そうなことは言えませんが、そうでない方法で独立し建築の仕事をする人も大勢います。
ライセンスはあったほうが確かに建築の仕事は取り扱いやすい、それは私の体感からも真実ではあると思います。
しかし、絶対に必要ではないことは是非知っておいて下さい。
まとめ
身の回りの建築家達について、少しづつですが説明してみました。
様々なタイプがいることが分かったと思います。
今まで多くの建築家と出会いましたが、思考法・人格・性格・学歴・価値観、、、タイプに共通項はありません。
そして今回紹介した建築家一人一人が、いまでも建築の仕事を続けています。
ですから自分が建築家に向いているかどうかなど、あまり余計なことで頭を悩ませないように。
また建築士資格がなくても、建築の仕事を独立してできることも覚えておいて下さい。
著名な建築家以外の仕事ぶりは普段なかなか目にする機会もないと思いましたので、実体験と身近な例で説明しました。
しかし、巨匠や美術作家の生き様や作品も是非学んでください。
幸い建築は学問書や美術書など多くの書物が用意されています。
何かを成せた人達から学べることは沢山あります。
腕を上げていく意味でも、うえを見ることは忘れずに。
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