A-2 独学系建築家はどこで学び、どう事務所に所属する?【これから建築家を目指すための参考例】

A 独学で建築家になってみる

建築学科で学んでいない人はどうやって建築設計事務所に勤めるのか。
今回はそのことを記事にします。
私の実体験を紹介していますので万人に適用できるわけではありませんが、できるだけ普遍的な要素を拾い読者の皆さんが応用できればと考えています。

昔建築家にあこがれていた、趣味で建築雑誌をみているあいだに建築家を目指したくなった、専門外だけど建築設計事務所へ転職したくなった。
学業で建築を修めていなくても、建築家になりたいという希望はあきらめなくてよいと思います。

私は文化服装学院という新宿にある専門学校でファッションを学び、一年間ほど勤めていました。
華やかな世界や才能ある友人をみて、自分には無理そうだと思えて諦めた経緯があります。
その後、東京造形大学という美術大学で美術とデザインの勉強をしていました。
建築とは無縁の学校でしたが、後に上海にある建築設計事務所で働きはじめます。


この記事では建築教育を受けていない私が建築事務所に勤めることができた実例と、友人知人から聞いている建築学科事情を少し説明しています。

少なくもとこの記事を書いている私本人は建築教育を受けてなく、独学で建築家になりました。
誰でもとは言い過ぎかもしれませんが、なれますよとは言い切れます。
建築教育を受けてなく、建築家になりたいと思う人の参考になれば。

独学系建築家を目指す前に知っておくこと

独学系建築家なる言葉は世の中に流通していないと思いますので、まずはその説明から。
建築教育を受けずに、独学・独力で建築家になった人。
先駆者の大先輩に安藤忠雄さんがいます。

学校で建築科目を修めれば、建築関係の就職はすんなりと済みます。
人手不足の業界ですので。
建築教育を受けなくても、仕事で建築を学べば建築家を目指すことができます。
無学でも実務経験から建築士の資格を取得することが可能。

一番スマートな方法は建築学科で勉強することです。
もう一つは建築設計事務所にもぐりこみ、働きながら勉強すること。
どちらにせよ学びの場が必要になります。

建築設計事務所にすべりこむまで

私の在籍した大学には建築学科自体なく、それにまつわる勉強はしていませんでした。
最も熱中したのは、知らない場所への旅。

大学を卒業する最後の年に、中国を一周する計画を立てました。
いちど大きな国を一廻りしてみたいなという単純な理由。
日本の美術大学特有のゆるさですが、その旅行記が卒業制作代わりでOKという教授のお墨付き旅行です。
結論からいうと、この大陸一周がきっかけで上海の建築設計事務所にもぐりこむことができました。

北京から入国し国境付近を反時計周りで移動して約半年。
上海までたどり着いていました。
就職活動などろくにせず夏頃には日本を出国し、卒業後の進退など何も決めていません。
働かなければなぁ、程度には常識人でしたので旅のついでに上海で職探しをしたのがはじまりです。

大学の授業で大好きな実技講義がありました。
外部からの先生が教えてくれたディスプレイデザイン。
その先生はデザインや工芸などのスタイル面だけではく、文学や歴史や人それぞれの考え方などを参考にして、デザインのあり様やモノが実現することで社会に影響を与えることなど、多くのことを楽しく教えてくれました。
その先生みたいにディスプレイの仕事でもできたら楽しそうだな、と考えていました。

当時上海にいた私は、ネットカフェで”空間”の検索キーワードで出てくる上海の会社や事務所へ、検索の上から順にひたすらアポイントのメールをしていました。

その中で一社だけ返信をしてくれたのが、建築をはじめるきっかけとなる建築設計事務所の所長です。
私のボスになるその人は、ツートップで主宰していた事務所を離れて自分だけの事務所を立ち上げる直前でした。
もし事務所を立ち上げて何でもしてくれるならまた声をかけるよ、そう言って当日は終りました。
冬に日本へ戻り、大学も卒業。無職です。
上海で話を聞いてくれたその人から連絡がありました。
事務所を立ち上げたので、上海で働いてみないかとのお誘い。
建築学科卒の日本人がいるので二人で来てほしいとの連絡です。
以上が建築設計事務所で働くまでの経緯ですが、応用できるようにポイントをまとめます。

建築無学者が設計事務所に所属するポイント

・建築以外の経験があるので、その部分を強調
独学系で建築家を目指す読者さんは、必然的に建築設計以外のことをしているはずなのでそこは特にアピールするとよいと思います。
私の場合は、建築外のデザイン経験があり変わったことしてる=建築やっている人間と違う価値観で案を提供してくれそう が結びつきました。
私のケースでは、一度ファッションを学びながら別の世界で働こうとしているのが興味深かったそう(所長談)。

・ひたすらアポイントメント
何十社でも何百社でも。
確かなことはまず探してアポイントを取らないと始まらないということです。
知識も何もない状況で、よく分からない業界へ飛び込むことは勇気が必要。
それでもまずは実際に会社や事務所へ伺えるよう行動しましょう。
当時の私にそれが可能だったのは無知と無邪気さでしたが、勇気でも補えるはずです。
ではどんな方法と会社にアポイントを取ったのか説明していきます。
私の場合は中国を一周している最中の学生を強調して、ちょっと普通の志願者とは違うなと認識してもらえるようにしました。
未知の専門分野なので、初めから会話だと物怖じします(私はですが)。
そこで日本人が主宰しているところは日本語で、中国人が主宰しているところは雰囲気のみの漢字中国語でメールを書き、ひたすら数で勝負しました。
その中でたった一社のただ一人だけが私に声をかけてくれました。

・チャンスがきたら即OK
大事なポイントですが、声が掛ったら即答しましょう。
行きます!と。
独学系の人は建築学科を出ている人たちよりも圧倒的に不利な立場にいると認識したほうがよく、声掛されること自体少ないのが現実。
私は何の迷いもなく、承諾しました。
場所は上海、給与や待遇も不明、PC持参、所長から大量の荷物運搬の依頼があってもです。
一度キャリアを手に出来れば、その後程度の差はあれ経験者として扱ってもらえるので、独立も転職もずっとハードルが下がります。
もしかしたら、とんでもなく詐欺のような会社かもしてません。
そんな会社であれば、直ぐに辞めれば済むことです。

建築学科に行くとしたらお薦めは?

将来建築を目指すとしてどこの大学がお薦めですか。
若い友人やそうしたお子さんをもった友人からたまに聞かれます。
経験がない独学の私がこの質問に答えるのは難しいです。
経験から分かることは、社会人を経験した人でも学校で建築科目を修めなおしたほうが、建築関連の仕事に就ける可能性はずっと高いこと。
そこで友人や知人の話しに出てくる限りでの情報ですが、日本に限定して少し。

・東大
説明の必要はなさそうですね。
知っている建築家をウィキペディアで調べてみましょう。
古今東西、多くの活躍されている建築家の出身校です。

・早稲田、東工大
私の修行時代の所長は早稲田でした。
私が好きな建築家、石山修武さんも早稲田卒。
知人にもこの大学出身の建築家は多い印象。

・美術大学であれば、東京藝大
美大で専門的な建築科目を設けている学校は少数。
卒業した知り合いの話です。
美術教育を優先している印象があるかも知れないが、建築教育としての色が強い。
一般的な建築学科と認識したほうがよい、そうです。

・横浜国立大学 Y-GSA
ここも講師陣が多彩で、納得です。
多くのトップランナーが講師陣についてます。
知人の話や建築誌を見ている限り、よさそうな学校。

なんか一流大学ばかりで参考にならない。
そう思われそうですね。
まだ学力や学歴が有利に影響する事実認識はあって損はないかな、が正直な印象。
もちろん世の中で建築している人たちが、上記の大学で殆どということは当然ありません。
また藝大の部分はちょっと別枠で考えて下さい。
私の受験経験から、美大は合否判断が他大学とまったく異なります。
美大予備校で浪人してよければ、今の美大ならどんな大学へも必ず入学できます。
かなり狭い範囲の技術(デッサンとか)だけを集中的にやれば受かるシステムになっているので。
入学後に編入でもして建築を学ぶのもよいでしょう。

研究室や先輩などの関係で、その先生の会社や事務所にインターンへいける機会も多いので、誰が教えているのかも学校選びの基準。
(※人気のある建築家ほど、難易度の高い大学で教えている事実もあります)
同じ研究室出身のコミュニティは、建築業界かなり繋がりが強いです。
建築学科の研究室は卒業した後も財産になるな、と周りを眺めている限りは思います。

知り合いにこんな人もいました。
会社や事務所の就職、将来の経歴をよくするため大学院からトップの大学に編入する方法です。
知人はこの方法で大学院のみ東大へ進みました。
学部から入学することに比べたら、相当小さな労力で入学できるみたいです。
実際、就職も大手難関の会社へ入社。
経験外のこぼれ話ですが、ご参考までに。

行動は体力のあるうちに

これから建築家を目指す人は、まずは事務所へもぐりこむことからはじめましょう。
それが一番の勉強方法です。
そのためには、建築以外からきた人間として自分の面白さを相手に伝えましょう。
何十社、何百社でも、とにかく声が掛るまで。
楽な方法ではありません。
独学を経験して、大学で建築を学んでいればなと思うことも沢山ありました。
特に研究室などアカデミーの人間関係が独学だとなかなか持てません。
そういった意味でも、学校に入り直すことも否定しません。

いずれにしても、すぐに行動しましょう。
建築業界の下積み時代はかなりハードです。
体力のある、できるだけ若い時期をお勧めします。
私は30歳手前からでしたが、どうにか乗りきれました(笑)

Pocket
LINEで送る

コメント

タイトルとURLをコピーしました